生態系への影響Effects on Ecosystem
(2021年 更新)
Q避難指示区域において生態系はどのように変わっていますか。
A2014年以降、哺乳類、鳥類、カエル、昆虫など様々な生物をモニタリングしています。哺乳類、鳥類、カエル類については調査データをWEB上で公開、更新しています。
図1 哺乳類・鳥類の出現頻度
哺乳類、鳥類は研究者向けにデータペーパーという形式でモニタリングデータを公開し、随時更新しています。
また、国立環境研究所(NIES)のWEBサイトBioWMやKIKI-TORI Map上で手軽に分布図を閲覧することもできます。
図2 トラップによる昆虫の採集個体数
避難指示区域の内外(および避難指示が解除された区域)で昆虫を捕獲(トラップ)して調査しています。
これにより得られたデータに関して、避難指示の影響を反映しているのか、偶然なのかを確認するために統計モデリングによる分析に取り組んでいます。
なお、2014年に採集された花粉を運ぶ昆虫等に関しては、キムネクマバチを除くほとんどの種において避難指示区域内で顕著に個体数が少ないものは見られませんでした。
哺乳類、鳥類に加え、2020年には、カエル類のデーターがデーターペーパー形式で公開されました。
図3 カエル類の音声モニタリング調査の概要
国立環境研究所は、避難指示区域とその周辺で録音装置(ICレコーダー)を野外に設置して、鳴き声を録音することでカエル類のデータを収集しました。
福島第一原子力発電所事故による避難指示区域とその周辺のカエル類の分布情報をこのように網羅的・系統的に整備して公開する例は世界初であり、これらのデータを基に、住民避難や帰還による被災地の生態系変化の実態解明が進むことが期待されます。
図4 調査地点と録音装置
避難指示区域は2015年調査当時のもの。市町村境界は国土交通省提供の国土数値情報(行政区域データ)による。
(区域の色分けは図5も同じ)
図5 2014~2015年の鳴き声データに基づくカエル類三種の分布バブルチャート
円の大きさはカエルの出現頻度に対応。市町村境界は国土交通省提供の国土数値情報(行政区域データ)による。
(カエル類写真は柗島野枝氏、深澤圭太主任研究員、吉岡主任研究員提供)
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参考文献
- 国立環境研究所, JBIF (2015) 生物多様性ウェブマッピングシステム (BioWM), 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター制作. http://www.nies.go.jp/biowm/ (2020年4月10日リニューアル)
- 国立環境研究所(2017)KIKI-TORI マップ, 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター制作. http://www.nies.go.jp/kikitori/contents/map/index.html (2020年12月10日閲覧)
- Fukasawa K., Mishima Y., Yoshioka A., Kumada N., Totsu K., Osawa T. (2016) Mammal assemblages recorded by camera traps inside and outside the evacuation zone of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident. Ecological Research, 31 (4), 493.
- Fukasawa K., Mishima Y., Yoshioka A., Kumada N., Totsu K. (2017) Acoustic monitoring data of avian species inside and outside the evacuation zone of the Fukushima Daiichi power plant accident. Ecological Research, 32(6), 769.
- 吉岡明良(2018) 陸域の生態系モニタリング~その工夫と成果. 災害環境研究の今第1号 震災後の自然環境 pp14-17.
- Yoshioka A., Mishima Y., Fukasawa K. (2015) Pollinators and other flying insects inside and outside the Fukushima evacuation zone. PLOS ONE, 10 (e0140957), 1-16.
- Yoshioka A. et al., Acoustic monitoring data of anuran species inside and outside the evacuation zone of the Fukushima Daiichi power plant accident., cological Research.(2020)