生態系への影響Effects on Ecosystem
(2019年 更新)
Q淡水魚の放射性セシウム濃度はどのような条件に影響されますか。
A国立環境研究所の研究グループは、ヤマメやイワナなどの「淡水魚」30種について福島県内の湖、河川で調査しました。その結果、湖では、魚が何を食べるか(食性)が、川では、食性よりも水質が、魚への放射性セシウム蓄積に大きく関係していることが分かり、放射性セシウムの魚への蓄積しやすさに影響する重要な要因が、湖と川で大きく異なることを明らかにしました。
この研究成果により、海水魚に比べ汚染が長期化している淡水魚の放射性セシウム濃度が今後どのように減少していくか、正確な予測につながることが期待されます。
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図4 淡水魚の放射性セシウム移行係数に影響を与える要因
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図5 湖と河川における淡水魚の放射性セシウム移行係数
- 福島県内の淡水魚の放射性セシウム移行係数は、30~25,000 の範囲にあり、これはチョルノービリ(チェルノブイリ)事故後の研究などで報告されている移行係数とほぼ同程度でした。
- 福島における淡水魚の移行係数は、海水魚の移行係数(100以下程度)と比べ、大幅に高いことが確認されました。
- 移行係数に影響を与える要因は、湖と川で大きく異なっています。湖と川のどちらにおいても、大きい魚ほど放射性セシウム濃度が高くなる「サイズ効果」が起こっていると推測されました。一方で、魚が何を食べているかという食性による影響は、湖だけで検出されました。
- 魚の移行係数を食性間で比べると、湖にいるヤマメ・イワナ・コクチバスといった他の魚を食べることのある魚食魚の移行係数が高くなっています。(図5)。他の魚を食べることで生物濃縮が起こり、セシウム濃度が高くなっている可能性があります。
- 魚の生息場所(遊泳魚、底生遊泳魚、底生魚に分類)が移行係数に与える影響は、湖でも川でも検出されませんでした。海水魚では、底生魚で比較的高い放射性セシウム濃度が報告されましたが、淡水魚ではその傾向はないと考えられます。