放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests

(2016年 更新)

雨が降ると、森林から放射性セシウムが土砂とともに流出するのではありませんか。<大規模な降雨時の流出>

大規模な降雨の際に、森林からも土砂とともに放射性セシウムが流出します。
しかし、森林内の沈着量に比べて、流出量は非常に少ない状況です。

福島県内の調査事例では、森林からの放射性セシウム流出の大部分は、水に溶けた状態(溶存態)ではなく土粒子に付着した状態(懸濁態)で生じています。
台風のような、年に数回程度の大雨による流出土砂が、放射性セシウムを森林から下流へと運ぶ主な要因となっています。
ただし、観測史上最大規模の平成27年9月関東・東北豪雨においても、森林内の沈着量と比べた放射性セシウムの年間流出率は0.4%未満と見積もられており、大部分が森林に蓄積されたままの状況です。

森林渓流における土砂流出の様子-晴天時森林渓流における土砂流出の様子-降雨時

図1 森林渓流における土砂流出の様子

宇田川上流(36か月) 太田川上流(24か月)
沈着量
(kBq/m2)
170 1,900
浮遊土砂由来の懸濁態137Cs平均濃度
(kBq/kg)
6.8~9.3 61~130
浮遊土砂由来の懸濁態137Cs流出量
(kBq/m2)
0.51 8.8
浮遊土砂由来の懸濁態137Cs流出率(%) 0.30 0.46
137Cs年間流出率(%) 0.04~0.16 0.08~0.38

表1 森林域を対象とした事故由来のセシウム137(137Cs)流出挙動
観測期間
宇多川上流:平成24年9月15日~平成27年9月15日
太田川上流:平成26年1月1日~平成27年12月31日

出典:1)Tsuji et al., 2016, Journal of Geophysical Research: Biogeosciences, vol. 121, 2588-2599、2)林ほか, 2016, 土木学会論文集G(環境), vol.72, no.7, p.III_37-III_43.