放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests

(2020年 更新)

森林から放射性セシウムを含む花粉が飛散し、人体に影響を及ぼすのではありませんか。

福島県内の調査事例では、放射性セシウムを含むスギ花粉を吸入することにより受ける被ばく線量は極めて低く、また、スギ花粉中の放射性セシウム濃度は、時間とともに減少する傾向にあります。

令和元(2019)年度の調査で測定された最高濃度の放射性セシウム(12.2 kBq/kg)がスギ花粉に含まれて大気中に飛散し、これを人が吸入した場合に受ける放射線量を2011年度と同様の前提条件で試算したところ、1時間あたり最大0.0000113 µSvとなりました。
この数値は、東京都新宿区で観測された1時間あたりの放射線量0.036 µSv(2020年2月1日時点)と比べても非常に低いものでした。

表 令和元(2019)年度調査結果に基づく人体が受ける放射線量の試算

区分(前提条件) 137Cs 134Cs
スギの花粉に含まれる放射性セシウムの濃度(①) 11.3 kBq/kg 0.9 kBq/kg
飛散するスギの花粉の過去最高の大気中の濃度(②) 2,207 個/m3
スギの花粉の1個あたりの重量 12 ナノグラム
大気中に飛散するスギの花粉の含まれる放射性セシウムの濃度
(①、②の濃度及び重量により計算)
0.000301 Bq/m3 0.000023 Bq/m3
上記大気を成人が吸入することにより受ける放射線量(上記濃度及び③、④により計算) 1 時間 0.0000113 μSv
花粉の飛散期間での累計(2月~5月) 0.0000325 mSv

資料:林野庁「令和元(2019)年度森林内の放射性物質の分布状況調査結果について

【過去の試算結果(1時間あたりの放射線量)】
H23(2011):0.000192 μSv
H24(2012):0.0000715 μSv
H25(2013):0.0000484 μSv
H26(2014):0.0000215 μSv
H27(2015):0.0000077 μSv
H28(2016):0.0000069 μSv
H29(2017):0.0000187 μSv
H30(2018):0.0000224 μSv

(参考)2011年度と同様の前提条件
① スギの花粉に含まれる放射性セシウム濃度は、令和元(2019)年度に調査を行ったスギの雄花の測定結果の最高値(12,200 Bq/kg)を使用。(花粉に含まれる放射性セシウムの濃度が雄花の濃度と同一と仮定)
② 飛散するスギ花粉の大気中の濃度は、環境省花粉情報システムによる測定結果の最高値2,207個/m3を使用。
③ 成人が1日に吸入する空気の量は、国際放射線防護委員会の数値(22.2 m3)を使用し、1時間あたりの吸入量はこれを24で割ったものとした。
実効線量係数(吸引摂取)は、セシウム137は0.039 μSv/Bq、セシウム134は0.020 μSv/Bqを使用。

東京都新宿区で観測された放射線量
(2020年2月1日時点)
1 時間 0.036 μSv

福島県内の同一地点における調査事例では、2019年度のスギ雄花に含まれるセシウム濃度は、前年度と同じレベルとなっています。