林野火災の影響(2017年十万山林野火災の事例)Case of Juman Mountain Forest Fire in 2017
(2019年 更新)
Q火災により河川や沢水に流出したセシウム量や濃度はどの程度ですか。その時間的な変化はどうでしたか。
A放射性セシウムの流出率は、火災跡地ではこれまで観察されたものに比べて、やや高いほうの部類に入ることがわかりました。
今後、火災地の被覆(森林内の地面が低木や草木類、落葉・落枝などで覆われている状態)の回復とともに、延焼しなかった場所と同程度になると考えられます。
- 原子力機構では、火災鎮火の約1か月後から約半年間、火災跡地と非延焼地で放射性セシウムの流出観測を実施しました。
- その結果、火災跡地では被覆率が低く、放射性セシウムの流出率は、これまで観測されている流出率のデータとしては比較的高い部類に入ることが分かりました。
- 流出率の高い観測データは被覆率が小さい地点で得られていることから、火災跡地で下層植生(低木や草木類など)が発達し、被覆が回復していくにつれて、流出率も非延焼地と同程度に低下していくと考えられます。
場所 | 植生状況 | 流出率(被覆) | 文献 |
---|---|---|---|
宇多川上流域 | アカマツ、スギ、落葉広葉樹、ヒノキ林 | 0.086~1.1% (被覆5~95%) |
錦織ほか (2015年) |
川俣町 | スギ林 | 0.07% (被覆95%) |
Yoshimuraほか (2015年) |
落葉広葉樹林 | 0.05~0.12% (被覆86~99%) |
Niizatoほか (2016年) |
|
落葉広葉樹林(除染地) | 0.84% (被覆30~50%) |
渡辺ほか (2019年) |
表1 他の流出観測データ
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参考文献
- 福島県放射線監視室、環境創造センター(福島県、日本原子力研究開発機構、国立環境研究所)、“浪江町林野火災に伴う放射性物質の環境影響把握のための調査結果について(中間報告)”、福島県原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会平成29年度第3回環境モニタリング評価部会、資料3-1(平成29年12月6日)
- 錦織ほか(2015), 林床被覆の違いが土壌侵食に伴う放射性セシウムの移動に及ぼす影響, 日本森林学会誌, 97, pp.63-69.
- Yoshimura, et al., (2015), Evaluation of Radiocaesium Wash-off by Soil Erosion from Various Land Uses using USLE Plots, Journal of Environmental Radioactivity, 139, pp.362-369.
- Niizato, et al. (2016), Input and output budgets of radiocesium concerning the forest floor in the mountain forest of Fukushima released from the TEPCO's Fukushima Dai-ichi nuclear power plant accident, Journal of Environmental Radioactivity, 161, 11-21.
- 渡辺ほか(2019), 除染後の落葉広葉樹林林縁地における放射性セシウム流出量の経年変化”、第20回「環境放射能」研究会要旨集、P-23.
- 長尾ほか(2019), 福島における放射性セシウムの環境動態研究の現状(平成30年度版), JAEA-Research 2019-002, 235p.