放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests

(2017年 更新)

雨が降ると、森林から放射性セシウムが土砂とともに流出するのではありませんか。<土砂中の濃度経時変化>

山地森林から流出する土砂の放射性セシウム濃度は、時間とともに減少する傾向が示されています。

福島県浪江町の調査事例では、約2年3か月間(2013年8月29日~2015年12月1日)で観測された放射性セシウムの流出率は、セシウム137(137Cs)で年間約0.5%程度と、他の調査地点よりもわずかに高いものの、1%に満たない値でした(表1)。

10年に1度の頻度で発生する大雨により、土砂の流出量が増加し、それに伴う137Cs流出量も増加しました(2015年9月2日~12月1日の観測期間)。しかし、平年値(2013年8月29日~2015年9月2日の観測期間)は0.05~0.24%と推定されます(表1)。

浪江町の治山ダムにおいて、治山ダムに流入し堆積した土壌の表層0~5cm部分を採取し、 137Cs濃度を測定したところ、時間とともに減少する傾向にありました(図1)。

表1 浪江町川房大柿の治山ダムにおける土砂・放射性セシウム流出量・流出率
※ 2015年9月9日と2015年9月10日の日降雨量はそれぞれ114mm及び171mmであり、年降雨量の約2割強が2日間で降りました。

期間 堆積物の流出量 137Csの流出量 137Csの流域からの流出率
2013年8月29日~2014年9月2日 0.5 m3 150 MBq 0.24 %
(年間0.19%)
2014年12月3日~2015年9月2日 0.1 m3 30 MBq 0.05 %
(年間0.06%)
2015年9月2日~2015年12月1日 1.8 m3 540 MBq 0.86 %
(年間3.4%)
観測期間の合計 2.4 m3 720 MBq 1.14 %
(年間0.51%)

治山ダム(浪江町)に堆積した表層土壌中の放射性セシウム(137Cs)濃度

図1 治山ダム(浪江町)に堆積した表層土壌中の放射性セシウム(137Cs)濃度
渡辺ほか、KEK Proceedings 2017-6, p.122 - 126, (2017)