生態系への影響Effects on Ecosystem

(2021年 更新)

土壌中のカリウムが多いと野生きのこが吸収するセシウムは減るというのは本当ですか。

放射性セシウム沈着量がほぼ等しい2つの調査地に発生した、ススケヤマドリタケの子実体の放射性セシウム濃度と土壌の化学性について、調査地間で比較しました。
その結果、土壌の交換性カリウム濃度が高い方で子実体の放射性セシウム濃度が低いことがわかりました。このことは、土壌のカリウムによってきのこのセシウム吸収が影響を受けることを示しています。
イネなどの農作物ではカリウムを施用することで植物体中の放射性セシウムの濃度が低くなることが知られています。今回の成果は、きのこについてもカリウムの施用によって放射性セシウム濃度が低くなる可能性を示しています。

2011年の福島第一原子力発電所事故によって東日本の広域は放射性物質の影響を受けました。野生きのこは放射性セシウム濃度が高いものが多く、2020年8月においても11県113市町村で食用としての出荷が制限されています。野生きのこの放射性セシウム濃度は同じ種であっても数倍ばらつくことが知られていましたが、その理由は明らかではありませんでした。農作物や樹木では土壌の交換性カリウム濃度が高いほど放射性セシウム濃度が低くなることが知られており、発生地点の土壌環境によって子実体(きのこ)の放射性セシウム濃度も影響を受けることがばらつきを生じる理由として考えられます。

調査プロット内に発生したススケヤマドリタケの子実体調査プロット内に発生したススケヤマドリタケの子実体

写真:調査プロット内に発生したススケヤマドリタケの子実体

そこで、放射性セシウム(137Cs)沈着量がほぼ等しい2つの調査地に発生した、ススケヤマドリタケ(写真)の子実体の放射性セシウム濃度と土壌の化学性について、調査地間で比較しました。その結果、土壌の交換性カリウム濃度が高い方で子実体の放射性セシウム濃度が低いことがわかりました(図)。このことは、土壌のカリウムによってきのこのセシウム吸収が影響を受けることを示しています。

図 ススケヤマドリタケの放射性セシウム(137Cs)濃度(左)は表層土壌(0-5cm層)の交換性カリウム濃度(右)が高い調査地で低くなっている

イネなどの農作物ではカリウムを施用することで植物体中の放射性セシウムの濃度が低くなることが知られています。今回の成果は、きのこについてもカリウムの施用によって放射性セシウム濃度が低くなる可能性を示しています。

(森林総合研究所などの研究成果。森林総合研究所ウェブサイトから転載(一部改編))