被ばく線量評価・除染Assessment of Exposure Doses and Decontamination
(2022年 更新)
Q山菜類中の放射性セシウムは調理法によってどのくらい減りますか。
A国立環境研究所が行った調理による山菜類、キノコ類の放射性セシウム低減試験によると、フキノトウ、タラノメ、コシアブラでは、1-2分間茹でたあと水にさらすことで放射性セシウムが調理前の半分以下になることがわかりました。また、ワラビは重曹であく抜きをすることで調理前の1割以下になりました。
福島県の里山地域を中心として、野生のきのこや山菜を食すことが日常であり、楽しみでしたが、福島第一原子力発電所事故により、それが一部地域で奪われてしまいました。
国立環境研究所は、福島県内で一般的に食べられており、未だに放射性セシウム濃度が比較的高い山菜類を対象として、処理や調理による放射性セシウムの除去率のパラメータを採取するとともに、内部被ばくの低減のためにさらに除去できる方法を検討するべく、調査を行いました。
調査方法
- 対象山菜:フキノトウ、タラノメ、コシアブラ、ワラビ
- 対象キノコ:サクラシメジ、ナラタケ、コウタケ、ナメコ
- 調理法:対象山菜やキノコの代表的な調理法
(塩ゆで・ゆで・浸水・干す+水戻し・重曹によるあく抜き等) ※浸水やゆで汁の固液比は約1:20 - 分析:調理前ー水洗い後、形をなるべく崩さず容器に詰めた
調理後ー細かく刻んで容器に詰めた
※ゲルマニウム半導体検出器でCsー137を測定(ワラビの調理前はNaIシンチレーションスペクトロメーター)
野生山菜、きのこの調理低減試験結果
山菜4種、およびキノコ4種の茹で等調理後のCs-137の残存率(調理後/調理前)を下図に示します。
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図1 野生山菜類の調理による低減効果
(エラーバーは標準偏差の2倍を示す) -
図2 野生キノコ類の調理による低減効果
(エラーバーは標準偏差の2倍を示す)
フキノトウ、タラノメ、コシアブラは、1~2分の1%塩水茄でと1時間の浸水により、調理前の放射性セシウムの30~45%程度に、ワラビは重曹を用いたあく抜きにより10%以下に低減しました(図1)。また、浸水時間が長いほど低減割合は大きくなりました。キノコ類も、1~2分の茄でにより調理前の20~50%程度に低減しました(図2)。山菜類は、茄でによって組織が壊れ、放射性セシウムが水に溶け出しやすくなったと考えられます。今後、他の種類の野生のきのこ類について、また他の調理についても検討していく予定です。
(国立環境研究所の研究成果。令和4年度福島県環境創造センター成果報告会 口頭発表要旨・ポスター集から転載(一部改編))
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参考文献
- 厚生労働省,現在の出荷制限・摂取制限の指示の一覧, (2021年8月確認)
- 原子力環境整備促進・資金管理センター(2013), 食品の調理・加工による放射性核種の除去率,環境パラメータ・シリーズ増補版, (2021年8月確認)
- 鍋師ら(2016),調理による牛肉・山菜類・果実類の放射性セシウム濃度及び送料の変化,RADIOISOTOPES,65,45–58.