生態系への影響Effects on Ecosystem
(2021年 更新)
Q福島県内の野生動物の放射性セシウム濃度はどのように変化していますか。【近年の傾向】
Aイノシシ及びツキノワグマの筋肉中137Cs 濃度は、近年であっても基準値を超過することがあります。
帰還困難区域内のイノシシの筋肉中137Cs 濃度は、帰還困難区域外の濃度より高い値で推移する傾向があります。
野生鳥獣放射線モニタリング調査
福島県自然保護課では、狩猟などにより捕獲された野生鳥獣(主に食用となり得る狩猟鳥獣として、イノシシ、ツキノワグマ、ニホンジカ、キジ、ヤマドリ、カモ類、ノウサギ)から筋肉を採取し、放射性核種の濃度測定を行っています。測定の結果は県のHPで公表されています。
イノシシやツキノワグマの筋肉中137Cs 濃度においては、検出下限値未満となる個体があります。一方で、近年であっても食品の基準値(134Cs と137Csの合算値で100 Bq/kg)を超過する個体が確認されています。
帰還困難区域におけるイノシシの筋肉中放射性セシウム濃度
上記の野生鳥獣放射線モニタリング調査は、帰還困難区域を除く地域で実施されています。帰還困難区域外で高い放射性Cs濃度を含有するイノシシが検出される要因のひとつとして、帰還困難区域からのイノシシの移動が考えられます。このため、帰還困難区域内におけるイノシシの放射性Cs濃度を調査しました。
帰還困難区域内においても、個体間での放射性Cs濃度の変動幅が大きいことがわかりました。また、イノシシの放射性Cs濃度は、帰還困難区域内及びその周辺域で捕獲された個体の方が帰還困難区域外で捕獲された個体よりも高い値で推移している傾向にありました。
今後の予定
イノシシとツキノワグマの筋肉中137Cs 濃度の季節変動が確認されており、それには食性や行動が影響している可能性があります。季節ごとに、胃内容物や生息域の動植物相、行動などを調べて、筋肉中137Cs濃度にどのような影響があるかを明らかにしようと考えています。
(福島県環境創造センターなどの研究結果。環境創造センターウェブサイトから転載(一部改編))
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参考文献
- Nemoto, Y., Saito, R. and Oomachi, H. (2018): Seasonal variation of Cesium-137 concentration in Asian black bear (Ursus thibetanus) and wild boar (Sus scrofa) in Fukushima Prefecture, Japan, PLOS ONE, vol. 13, no. 7, e0200797. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0200797
- Saito, R., Kumada, R., Inami, K., Kanda, K., Kabeya, M., Tamaoki, M. and Nemoto, Y. (2022): Monitoring of radioactive cesium in wild boars captured inside the difficult-to-return zone in Fukushima Prefecture over a 5-year period, Scientific Reports, vol. 12, 5667. https://doi.org/10.1038/s41598-022-08444-1