放射性物質の動き-河川水系Radioactivity Dynamics in River System
(2020年 更新)
Q大雨でセシウムが流れ出ることはないですか。<令和元年10月大雨時の放射性セシウム移動状況-河川の中・下流域>
A平成27年9月関東・東北豪雨および令和元年10月東日本台風(台風第19号)の前後における空間線量率の測定値、および土砂の堆積状況を総合的に考察しました。
その結果、いずれの地点でも砂の堆積により線量率が低下しており、河道壁面から流出したセシウム濃度の低い土砂が堆積することで地面が遮へいされ、空間線量率が低下したと考えられます。
① 上真野川(小池地区仮置場):空間線量率と土砂の堆積状況
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図2 定点測定地点の空間線量率(令和元年10月台風10号の前後)
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図3 土砂の堆積状況度
小河川からの砂が下流側の仮置場に流入・堆積し、線量率が減少。
- 上真野川の上流域には仮置場付近より線量率が高いエリアもありますが、仮置場付近に堆積した土砂の大部分は、小河川からの流入と推測できます。
→ 小河川からは礫も流入。小河川の合流点より上流側での土砂の堆積はほとんどありません。 - 堆積した土砂の供給源である小河川流域は、ほぼすべてが森林でした。
②太田川 および ③小高川の河川敷における空間線量率
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図4 ガンマプロッターによる地上1 mの空間線量率の測定結果(②太田川)
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図5 ガンマプロッターによる地上1 mの空間線量率の測定結果(③小高川)
台風後に空間線量率が大幅に減少し、0.4μSv/h以上の範囲(緑~オレンジ色)が縮小しています。
●堆積した土砂の起源と特徴
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図6 土砂の堆積と河道壁の侵食の様子
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図7 大雨時における河道の侵食イメージ
- 土砂が堆積した場所は、いずれもセシウム濃度の低い土砂の堆積により、元の地表面が遮へいされ、空間線量率が低下しました。
- セシウム濃度の低い土砂が堆積する要因
・堆積している砂は、比較的粒径の大きい真砂土(砂浜の砂に類似)であり、森林の表層土壌ではない。
・真砂土は主に、森林内の水路になっているガリーのように、侵食されやすい場所から流出。
※ガリー:水の流れにより洗掘されてできた大きな谷状の溝。 - ガリーでは深い部分の土が露出しており、増水時に侵食されやすい。
- 深い部分の土はセシウムをほとんど含まない。
- 今後、大雨時には、セシウムをほとんど含まない深い部分の土砂が主に流出すると考えられます。