放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests

(2020年 更新)

スギ材に取り込まれた放射性セシウムはどこからきたのですか?

国立環境研究所と森林総合研究所の研究グループは、福島県川内村のスギ林で、幹の生長にともなって材部分に取り込まれた放射性セシウムがどこから来たのかを調べました。

その結果、事故後の2011年8月からの5年間に材に蓄積された放射性セシウム量は、最大でその半分程度が土壌から根を通じて吸収されたものと推定されました。残りは、事故直後に葉の表面などから吸収された放射性セシウムの一部が、スギの体内を移動してきたものと考えられます。

スギ幹材への放射性セシウムの吸収経路の割合

図 スギ幹材への放射性セシウムの吸収経路の割合

国立環境研究所と森林総合研究所の研究グループは、幹材の放射性セシウム蓄積量が増加傾向にある福島県川内村のスギ林において、セシウム同位体比法という新たな方法を用いることで、根から幹材に吸収された放射性セシウム量を推定することに成功しました。

このスギ林では、幹材の放射性セシウム蓄積量は2011年8月からの5年間で約1.3倍になりましたが、その増加分の最大で半分程度が、土壌から根を通じて吸収されたものと推定されました。残りは、事故直後に葉の表面などから吸収された放射性セシウムの一部が、スギの体内で葉などから幹材へと移動してきたものと考えられます(上図)。

この研究により、スギ幹材への放射性セシウムの吸収経路として、葉からの吸収と根からの吸収のどちらも重要であることが明らかになりました。

※セシウム同位体比法:放射性物質ではなく自然に存在する安定同位体セシウムの動きをもとに、放射性セシウムの動きを推定する方法。

(国立環境研究所・森林総合研究所の研究成果)