放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests

(2019年 更新)

森林内の放射性セシウムは、樹木から地表へどのように移動するのですか。<林内雨樹幹流・落葉による移動>

福島県川内村と川俣町の調査事例では、林内雨樹幹流および落葉に放射性セシウムが検出されていることから、それらを通して樹木から地表へ移動していると考えられます。
ただし、それらの放射性セシウム濃度は時間とともに減少する傾向にあります。

  • 川内村と川俣町の調査事例では、スギ林と広葉樹混交林はともに、林内雨と落葉により沈着する放射性セシウム(137Cs)の量が時間とともに減少する傾向を示しています。
  • 上記の地点において、樹幹流に含まれる137Csの濃度は全般的に低下する傾向があり、その寄与は続いているものの、沈着量全体でみると小さい状況です。

林内雨、樹幹流、リターフォール(落葉落枝)によるセシウムの移動量(樹木上部⇒林床)

図1 林内雨樹幹流、リターフォール(落葉落枝)によるセシウムの移動量(樹木上部⇒林床

  • 調査した林分において、樹木上部(樹冠)から林床へのセシウム移動量は、経年で急激に減少しています。
  • 2019年度は、昨年度よりさらに半分程度の移動量に低下しています。
  • 樹木上部(樹冠)から林床へのセシウム移動は、現時点では、あまり生じていない(動きが遅い)と考えられます。

林内雨と樹幹流に含まれるセシウム137濃度の経時変化

図2 林内雨樹幹流に含まれるセシウム137濃度の経時変化
林内雨のセシウム137濃度は、昨年度までと同様に、低下する傾向にあります。

※正規化セシウム濃度とは…
試料を採取した地点のセシウムの総量で、試料の濃度を割り算した値。この値で比較することにより、採取地点で異なるセシウム総量の影響を受けることなく、モニタリングデータを見ることができる。

リターフォールに含まれるセシウム137濃度の経時変化

図3 リターフォールに含まれるセシウム137濃度の経時変化

  • 昨年度までの結果と同様に、セシウム濃度は低下する傾向にあります
  • 広葉樹林(アカマツ・コナラ林)では、昨年度と比較すると濃度があまり変化していませんでした