被ばく線量評価・除染Assessment of Exposure Doses and Decontamination

(2024年 更新)

除染で発生した土を一時的に保管していた場所(仮置場の跡地)で農作物を育てることはできますか。また、安全ですか。

福島県環境創造センターが行った現地調査により、仮置場として使われていた土地の土壌が圧縮され水はけが悪くなっていることがわかりました。しかし、実際の仮置場跡地での実証試験の結果、深く耕すことで水はけが改善されること、作物が育つことが確認されました。また、仮置場跡地での様々な土地利用を想定し、そこでの活動に伴う外部被ばくや育てた農作物を食べることによる内部被ばく等を評価したところ、保守的に計算を行っても1mSv/年を下回ることがわかりました。

除去土壌(除染で発生した土)の仮置場(図1)では、重機の走行や除去土壌の保管による土壌の圧縮が懸念されました。土壌が圧縮されると水はけが悪くなり、表土の流出が起きたり作物を育てるのが難しくなります。そのため、中通りの仮置場3か所、浜通りの仮置場3か所を対象として、土壌硬度計による調査を行いました。調査の結果、特に重機走行区画で土壌の締め固まりが起きていることがわかりました(図2)。

除去土壌等の仮置場の例

図1 除去土壌等の仮置場の例

除去土壌等保管区、非保管区及び重機走行路の土壌硬度測定結果の例

図2 除去土壌等保管区、非保管区及び重機走行路の土壌硬度測定結果の例

次に、実際の仮置場跡地で圃場をつくり作物を育てる実証試験を行いました。圃場をつくるにあたり、深く(60cm)耕す区画と通常の深さ(30cm)で耕す区画を設け、水はけの違いを確認しました。また、仮置場を原状回復する際は、除染や仮置場設置時に減った土壌の補填に山砂を用いることが多いため試験でも山砂を客土しました。
試験の結果、作物(コマツナ等)は全区画で食用サイズまで成長しました(図3)。養分が少ない山砂を加えても、適切に施肥をすることで作物を育てることができることを確認しました。また、深く耕した区画においては水はけが改善されたことにより表土の流出が抑えられることを確認しました(図4)。

  • 作物(コマツナ)の生育状況

    図3 作物(コマツナ)の生育状況

  • 条件毎の土壌侵食量

    図4 条件毎の土壌侵食量

更に、仮置場跡地の利用に伴う被ばく線量を計算し安全性を確認しました。また、仮置場跡地での様々な土地利用を想定し、①そこでの活動に伴う外部被ばく、②育てた農作物等を食べることによる内部被ばく、③土ぼこり等の粉じんの吸入による内部被ばく、④土壌が口に入ってしまった際の内部被ばくを評価したところ、保守的に計算を行っても1mSv/年を下回ることがわかりました(図5)。

仮置場跡地の利用に伴う被ばく線量評価結果(大人の場合)

図5 仮置場跡地の利用に伴う被ばく線量評価結果(大人の場合)