放射性物質・空間線量率Radioactivity and Air Dose Rate

(2018年 更新)

森林中の放射性セシウムの分布によって、どのように空間線量率は変わりますか。【解析事例】

セシウムは時間とともに木から地面へ、また地面では落ち葉の層から土壌の層へ移動しています。放射性セシウムが木から地面に移動することによって、地上1m高さの空間線量率は上昇すると推定されました。これは放射線源が近くなるためです。
一方、落ち葉の層から土壌の層へ放射性セシウムが移動することによって、落ち葉や土壌による放射線の遮へいの効果で空間線量率は低下すると推定されました。両者の影響と物理的な減衰によって、森林内の空間線量率はこれまで微減してきています。

図1は、空間線量率評価モデル3D-ADRESによる計算領域モデルの例です。地形、木、落ち葉の層、土壌の層を考慮し、セシウム分布を仮定しています。

3D-ADRESにより作成した放射線輸送解析のためのジオメトリモデル

図1 3D-ADRESにより作成した放射線輸送解析のためのジオメトリモデル

木、落ち葉の層、土壌の層に含まれるセシウムの割合を変えた計算結果の例を図2に示します。

  • は事故後間もない時期を想定しており、セシウムは木や落ち葉の層に多く存在いています。線量率は上空10数メートルで高い傾向を示しています。
  • はセシウムが木から落ち葉の層に移動した状態を仮定しています。地上1メートルの線量率が高くなっています。
  • は落ち葉の層から下の土壌の層にセシウムが移動したことを想定した計算です。線量率は全体的に低下しています。

森林内のセシウム分布の時間変化を考慮したシミュレーション結果森林内のセシウム分布の時間変化を考慮したシミュレーション結果森林内のセシウム分布の時間変化を考慮したシミュレーション結果

図2 森林内のセシウム分布の時間変化を考慮したシミュレーション結果
(下部の値は地上1m高さの空間線量率の平均値)

参考文献

  1. 佐久間ほか:環境放射能除染学会誌 6(3) 145-152 (2018)