放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests

(2023年 更新)

福島県の森林の地表(林床)の放射性セシウム137(137Cs)濃度はどのように変化し、今後どのように変化すると考えられますか。

林床の有機物層の137Cs濃度は事故後から速やかに減少していること、一方でその減少傾向は植生の違いや年平均気温等にも左右されることが明らかになりました。とくに落葉広葉樹林や冷涼な高標高地域では減少速度の低下が見られ、137Cs濃度が相対的に高いまま留まりやすい可能性が示唆されています。

国立環境研究所と森林総合研究所の研究チームは、放射線生態学モデル”FoRothCs”と呼ばれる数理モデルを用いて、福島第一原発事故の影響下にある福島県全域の森林の地表(林床)に堆積する落ち葉など有機物層における放射性セシウム137(137Cs)濃度の20年間の変化を、常緑針葉樹林と落葉広葉樹林に分けて日本で初めて広域推定しました。

その結果、林床の有機物層の137Cs濃度は事故後から速やかに減少していること、一方でその減少傾向は植生の違いや年平均気温等にも左右されることが明らかになりました。とくに落葉広葉樹林や冷涼な高標高地域では減少速度の低下が見られ、137Cs濃度が相対的に高いまま留まりやすい可能性が示唆されました。

この結果により、森林生態系の137Cs汚染の今後のより正確な把握やその影響下にある流域生態系における効率的な汚染管理への応用が期待されます。

FoRothCsモデルによる林床の有機物層における137Cs濃度の推定結果

図 FoRothCsモデルによる林床の有機物層における137Cs濃度の推定結果

(国立環境研究所らの研究成果。国立環境研究所ウェブサイトから転載(一部改編))