成果報告会

令和4年度 福島研究開発部門 成果報告会

廃炉と環境回復 ~研究開発の今までとこれから~

令和4年度 福島研究開発部門成果報告会での主なご質問及び回答


セッション1:燃料デブリ「安全な燃料デブリの取り出しと性状把握」

ご質問内容 回答
燃料デブリは従来の合金でないような種類と聞いている。この燃料デブリにヒントを得て新たな金属材料の開発はできるか。 高温状態で溶融した燃料と金属が溶け固まった燃料デブリの中には、二種以上の金属元素等が融合してできた物質(合金)あるいは金属系の化合物が含有されている 可能性が高く、先ずはそれをきちんと分析し、データを収集・蓄積のうえ、特性を把握することが重要と考えています。 その中で、新たな金属材料の開発のヒントになるような事実が含まれている可能性があり、その知見を広く展開してまいります。


セッション2:廃棄物対策「安全な廃棄物の管理と性状把握」

ご質問内容 回答
六ケ所再処理工場でも核物質の分析等をおこなっているのではないか。六ケ所との分析連携、1Fの結果を六ケ所に反映、等は可能か。 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「JAEA」と言う)大熊分析・研究センター放射性物質分析・研究施設第1棟で実施する分析は、 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」と言う)の放射性廃棄物を対象としています。また同第2棟で実施する分析は、燃料デブリ等を対象とします。
一方、日本原燃株式会社の六ケ所再処理工場における分析は、主に実用炉の使用済燃料等を対象とされています。分析対象は異なるものですが、両施設に共通する分析技術・手法に係る知見の共有を図ることは重要と考えております。
また、六ケ所再処理工場が将来的に廃止措置の段階になった際にも、大熊分析・研究センターで蓄積される多種多様な放射性廃棄物の分析に関する知見・経験を六ケ所再処理工場に反映することが可能です。
こうした分析技術は今後他の施設や外国の発電施設で同じような事故が起きた場合の基礎技術となり得ると思う。
分析の標準化や国際化の動きはあるか。
JAEA大熊分析・研究センター放射性物質分析・研究施設における分析は、福島第一原子力発電所の放射性廃棄物と燃料デブリを対象として主に性状把握を目的として実施します。 特に事故で発生した放射性廃棄物は、通常の原子力発電所の廃炉で発生する放射性廃棄物と異なり、大量かつ多種多様であるため、それらの性状把握を適切に行うことが課題となっています。 そのため、ご指摘のとおり、これらの分析技術については、今後同じような事故が発生した場合に備えて重要なものと考えております。
このような放射性廃棄物の性状把握の手法・方法論については、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の専門家グループ(EGCUL)等を通じて海外の専門家と情報共有し、議論してきました。
https://www.oecd-nea.org/jcms/pl_62389/characterisation-methodology-for-unconventional-and-legacy-waste

燃料デブリについても、同様にOECD/NEAの国際共同プロジェクト(PreADES)において議論してきました。
https://www.oecd-nea.org/jcms/pl_25169/preparatory-study-on-analysis-of-fuel-debris-preades-project

また、放射性物質分析・研究施設第1棟では、今後分析試料数が増大することを踏まえ、国内外の専門家と相談するとともに、国際原子力機関(IAEA)や国際純正・応用化学連合(IUPAC)のガイドラインなども参考としながら標準的な分析方法の開発を進めているところです。
分析方法については、文部科学省及び原子力規制庁の放射能測定法シリーズのような公開されたマニュアルがありますが、大熊分析・研究センターで開発を進める分析方法は、国内外での分析のニーズ(市場規模)が小さいため、 現時点では、例えばJISのような工業規格や国際的な標準であるISOのような標準化、国際化の予定はない状況です。
ただし、一般に公開することにより分析方法を共有化していきたいと考えており、国内外の分析専門誌への投稿を順次実施しており国際的にも公開しています。
廃棄物管理の中にAIの利用は考えられるか。 AI(人工知能)の技術は、ビッグデータや画像など多量の情報を扱う分野において日常生活の様々な場面で利用されるようになっており、 放射性廃棄物の管理においてもその合理化を推進するために活用を検討すべきところです。大量かつ多種多様な福島第一原子力発電所の放射性廃棄物の管理においても、 AIの主要な技術分野(機械学習、データマイニング、推論など)を活用することにより現場の実務や廃棄物情報の管理の合理化が図られるものと期待されます。
いつか1F事故の廃炉や廃棄物に関連してNRAの規制対象になることはあるのか。 原子力規制委員会は原子力災害が発生した福島第一原子力発電所を「特定原子力施設」に指定し、 これを受けて東京電力ホールディングス株式会社は「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」を作成、原子力規制委員会による認可を受けて安全を管理しつつ廃炉を進めています。 その状況は、特定原子力施設監視・評価検討会において確認されています。なお、同発電所に隣接するJAEA大熊分析・研究センター放射性物質分析・研究施設は、特定原子力施設の一部として規制対象とされています。


セッション3:環境回復「避難指示区域解除、福島の復興と環境回復の取り組み」

ご質問内容 回答
福島の県民はチェルノブイリ原発事故の子どもの白血病などの報道を見て自分や自分の子孫も放射線的な影響を受けると誤解している人が多い。 チェルノブイリ原発事故と根本的に違う、セシウムのみか、チェルノブイリ原発事故のように核物質汚染、食物摂取制限をしなかったための体内蓄積による影響とは別、ということを何度でも繰り返し説明するべきではないか。 セシウムだけ、というのはほとんど後世に影響を与えないと思う。 福島第一原子力発電所事故では、炉心の火災を招いたチェルノブイリ原子力発電所の事故とは異なり、格納容器がプルトニウムなど非揮発性の放射性物質の放出を抑制し、格納容器から外に放出されたのはヨウ素やセシウムなど揮発性の放射性物質が中心でした。 また、環境中に放出された放射性物質のうち、ヨウ素131は半減期が約8日と短く、環境中に支配的に残ったのは、ご指摘のとおりセシウム(セシウム137:半減期30 年とセシウム134:半減期2 年)でした。
これらのセシウムは地表に沈着した後、土壌中の粘土粒子などに強く取り込まれたことから、除染されていない土壌では、現在もほとんどが表層部にとどまっており、地下深くまで浸透することはないと考えられています。
また、ご指摘のとおり、福島第一原子力発電所事故後、政府により速やかに避難指示区域が設定され、食品基準も定められたことから、これらが住民の外部被ばく、内部被ばくの抑制に有効に機能しました。 その後、除染等による線量低減の確認等を踏まえた避難指示解除により、住民の帰還が進んでいます。
しかしながら、現在も陸域に沈着した放射性セシウムが残っていることから、JAEAとしても、残された避難指示区域(帰還困難区域の未解除部分)の解除に向けて、放射線モニタリングや環境中でのセシウムの動きを調べる環境動態研究に引き続き取り組んでおります。
今回ご指摘の点も含め、事実及び根拠となる研究成果を整理し、発信していくことが重要であり、JAEAは、福島の環境回復に関する研究で得られた知見を科学的根拠とともに分かりやすく説明することを目的として『根拠情報Q&Aサイト』を構築しており、正しい情報を分かりやすく発信してまいります。
【情報根拠Q&Aサイト】https://fukushima.jaea.go.jp/QA/

(参考)
『根拠情報Q&Aサイト』では、これまで受けたご質問に対応し、現在、以下の情報についてお示ししています
・他の放射性物質より半減期が長く、濃度が高い等の理由により、セシウム137及びセシウム134が、他の放射性物質より被ばく線量に寄与することが推定されること
https://fukushima.jaea.go.jp/QA/q0.html

・土壌の深さ方向への放射性セシウムの移動はわずかであり、福島県及び周辺県のモニタリングでは、地下水には放射性セシウムは検出されていないこと
https://fukushima.jaea.go.jp/QA/q326-3.html
https://fukushima.jaea.go.jp/QA/q326-2.html
この前、宮城県の丸森町でゲリラ豪雨に関する洪水が起きた。宮城県で丸森町は一番放射能汚染が多かった。 このような洪水が福島で起きれば山地の土砂が川に流れだす、とかの汚染が発生する恐れがある。やはり、森林除染は長期的に見ても必要ではないか。 洪水が福島で起きて山地の土砂が川に流れ出すと、それとともに放射性セシウムが流出するおそれがあることはご指摘のとおりですが、 土砂が流出しやすい斜面の表面近くに堆積した放射性セシウムは既に流出していることから、今後新たに流出する量はこれまでに比べて少ないと考えられます。
具体的には、洪水が起きた場合、一般的に山地からの土砂は、山地の大部分を占める普通の森林斜面からではなく、土砂が流出しやすい沢筋などの限られた斜面から流出します。 2019年10月大雨時の福島県南相馬市上真野川における越流後のJAEAによる調査結果では、このような流出しやすい斜面では、放射性セシウムを多く含む表層部分の土砂は既に流出しており、 越流時には放射性セシウムを多く含んでいない深い部分の土砂が流出していました。請戸川、高瀬川、太田川のJAEAによる観測でも、流出土砂中に含まれる放射性セシウムの濃度は、時間とともに減少していました。 また、2019年10月大雨後に上流からの土砂が大量に堆積した下流の河川敷の線量率を測定すると、放射性セシウムの濃度が低い土砂の堆積による遮蔽効果のため、大雨前の線量率よりも低くなっていました。
なお、森林除染のあり方については、生活環境における空間線量率低減の観点や、住居周辺の里山等の森林内で日常的に人が立ち入る場所における追加被ばく線量を低減する観点から、環境省において検討されています。
森林の土地、地面の線量を空中モニタリングして、それを逆計算して、樹木、土地の部分の汚染マップを測定するべきではないか。 JAEAの環境モニタリングを担当するチームでは、無人ヘリを用いて上空における線量率の分布を測定し、そこから地面の空間線量率分布を「逆解析」して、 分布状況をマップ化する技術を既に開発しています。(ご参照:「環境回復に係る研究開発」発表資料①のp.4)開発した技術については、特定復興再生拠点を含む帰還困難区域のモニタリング結果の一部の解析に利用するとともに、 新しい放射線イメージング技術への適用を検討しています(https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5074890)。

さらに、農地、森林、道路、これらが混在する市街地など、地面の状態(土・舗装)、地形、遮へい物の有無等の状況が異なる福島の様々な土地利用におけるモニタリングで得られたデータや測定・解析手法の特性に関する知見を活用し、 より高い精度で短時間に分布状況を評価・マップ化する先進的なモニタリング技術の開発も進めており、早ければ2023年度には一部成果を発表できる見込みです。
【発表資料①「環境回復に係る研究開発」】


その他のご質問

ご質問内容 回答
高校生や研究者に科学技術倫理についてはどのような教育をされているのでしょうか? 原子力学会も事故の教訓として倫理を一段と重視し、ロボット・ドローンや放射能を扱う際には昨今の国際情勢からもますます倫理が重要かと思います。倫理だけでなく公共や政治の教育も必要かと思いますが。 JAEAでは高校生などを対象として科学技術倫理についての教育活動を行ってはおりませんが、教育関係機関のご要望を踏まえ、科学技術活動の位置づけや研究開発の適切な管理とそれらの意識に留意して、 放射線に関する基本的な知識などに関する講義等を実施しています。(ご参照:発表資料「福島復興に向けた研究開発の取り組み概要」のP.17)
また、JAEAの研究者・技術者を含む職員等を対象に、コンプライアンス、安全・品質保証及び情報・核セキュリティなど自らが係わる、進める活動への倫理観の維持・向上を図る教育を行っています。
【発表資料「福島復興に向けた研究開発の取り組み概要」】
「死の谷」を超えた「事業化」とは具体的にどのような組織がするのでしょうか?「研究開発」と「事業」の違いは何でしょうか?
「研究開発事業」というのもありそうですし、東電は「公共事業」とも言いそうですし・・・
JAEAは、技術課題の解決に向けた「研究開発」を担い、福島第一原子力発電所の現場で実証とその後の現場への実装に向けた技術支援を行います。 例えば、作業環境の安全性向上にも繋げる目的で放射線を遠隔より計測し、その結果を短時間で可視化する装置(小型コンプトンカメラ)を開発し、それらを使って現場での計測が進められています。
次に、これら開発した成果を企業が製品化することで社会への展開が進む、この結果が「事業化」と言えるものと考えます。 例えば、先ほどの計測装置をドローンに搭載し空中から環境計測を可能とするシステムの製品化が企業主導で行われています。
よって、それぞれ担う組織は、段階に応じて異なると考えますが、研究成果を事業化に繋げる橋渡しもJAEAの役割として重要と考えています。
【JAEA福島部門HP「遠隔放射線イメージングシステム」】
https://clads.jaea.go.jp/jp/rd/radi_01.html
廃炉の研究に関連して全国の原子力関連の大学や高専の学生の実験やサイト内見学、夏季実習等の受入等は検討しないか。 今全国の大学の原子力施設の老朽化を考えると、福島を実地研修の場所として考えられないか。 廃炉の研究に関連した取組みでは、公募事業(英知事業)を通じて大学などと連携した研究開発を進めるとともに、 全国の大学生や高専生を対象に夏期実習や通年で行う実習など各種プログラムを企画・実施しています。これらのプログラムには、JAEAが福島県内に保有する施設・設備を活用した実地研修も含まれています。 また、大学、高専等との共同研究を通して、JAEAの施設・設備を用いた研究を実施している例もあります。なお、福島第一原子力発電所等の見学についても、学校・学生のご要望も踏まえ関係機関と連携して進めてまいります。

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