放射性物質・空間線量率Radioactivity and Air Dose Rate

(2014年 更新)

2011年の福島第一原子力発電所の事故では、大気中および海洋にどのような放射性物質がどれくらい放出されたのですか。

事故によりさまざまな種類の放射性物質が大量に放出されました。その多くは半減期が短い、または放出量が少ないものであり、 現在もまだ残存している重要な放射性物質はセシウム137(137Cs)です。

表1 福島事故により放出された主要な放射性物質と半減期

放射性物質 半減期
キセノン133(133Xe) 5.2 日
セシウム134(134Cs) 2.1 年
セシウム137(137Cs) 30 年
ストロンチウム89(89Sr) 50.5 日
ストロンチウム90(90Sr) 29.1 年
テルル129m(129mTe) 33.6 日
プルトニウム238(238Pu) 87.7 年
プルトニウム239(239Pu) 24,065 年
プルトニウム240(240Pu) 6,537 年
プルトニウム238(241Pu) 14.4 年
ヨウ素131(131I) 8 日

表2 UNSCEARにより取りまとめられた137Csの推定放出量(PBq)

事故時に1号機から3号機内にあったセシウム137量 大気放出 海洋放出
直接放出 間接放出
700 6~20 3~6 5~8

  • 大気に放出された量は、ヨウ素131が10~50京ベクレル、セシウム137が0.6~2京ベクレルと推定されています(セシウム134はセシウム137と同程度)。
  • 2011年3月12日から大量の放出が始まり、1週間にわたって放出率が大きく変動した後、徐々に低下し、4月初めの時点で最初の週の1,000分の1以下に低下しました。
  • 放出量は測定値が存在しないことから推測する必要があり、複数の機関により様々なデータや方法を用いて推定が行われています。
  • UNSCEARは、陸圏環境での放射性核種の時間空間分布を推定するための合理的な基礎データとして、原子力機構の推定値を最適なものと選択しています。
  • 放出量と半減期の関係から、将来にかけて重要な放射性物質はセシウム137であると考えられています。
  • 原子力機構の研究は、福島第一原子力発電所事故により放出されたセシウム137量を、約1.7京ベクレルと推定しました。このうち、大気への放出が約1.3京ベクレル、海への直接流出が約0.4京ベクレルです。
  • 大気へ放出されたのちに陸地に沈着したセシウム137量は、およそ0.6京ベクレルと推定されています。
  • 海には、直接放出されたものと大気へ放出され海に沈着したもので、合計約1.1京ベクレルが流出しました。そのうち、0.02京ベクレルが海底の土壌に付着し、その他は海洋に拡散・希釈されたと推定されています。
  • 陸地に沈着したあと川を通して流出するセシウム量は、極めて少ないこともわかってきています。


セシウム137の環境への放出量 (京ベクレル)

図1 セシウム137の環境への放出量 (京ベクレル)