宅地

 除染前に線量率等のモニタリングを実施し,これらの情報をもとに,高圧水洗浄拭き取り,剥離剤塗布による剥ぎ取り等の除染方法を宅地の除染として適用しました。このとき,雨樋下部にある周りに比べて汚染の度合いが特に高い部分(ホットスポット)などを見つけて,これらを事前に除去しました。(図1)

 屋根の除染は高所作業なため,足場や梯子が必要になり,また,斜面で瓦など曲面に対して施すので,人力による作業が中心となりました。震災や津波による屋根の健全度への影響にも留意し,厳冬期の除染では,除染時に使用した水が凍ることによる屋根の損傷にも配慮しました。

 表1に示すとおり,剥離剤塗布による除染効果が他の方法よりも低減率が高い結果となりましたが,用いた剥離剤では養生に1~3日程度を要し,剥ぎ取り完了まで足場の撤去ができないなどの作業性のデメリットがありました。また,高圧水洗浄では,洗浄水と共に飛散する土埃等の飛散防止・回収等の作業が必要でした。屋根について,材質の違いによって除染効果に差異が確認できました。

 瓦は材質により低減率自体は異なるものの,水を使った洗浄と比較し,洗浄水と共に飛散する土埃等の二次汚染の可能性が低く,建物の損傷等による室内への漏えいの可能性が無いという点でブラシ掛けや拭取りも有利と言えます。雨樋は,堆積物を除去し,さらにふき取ることによって高い除染効果が得られました。

 壁の除染については,図2に示すとおり,高圧水洗浄による結果とブラッシングによる結果に顕著な差は見られませんでしたが,拭き取りについては表面が土壁や木製の場合はほとんど除染効果が得られず,トタン等の金属やガラスについても顕著な効果はありませんでした。高圧水洗浄については,洗浄水と共に飛散する土埃等の飛散防止・回収,水処理等の作業が必要となりました。水を使った洗浄と比較し,建物の損傷等による室内への漏えいの可能性が低い,水処理等が必要ないという点でブラッシングの方が有利とも考えられます。ただし,他の除染において高圧水洗浄を用い,既に水処理等の用意がある場合は,漏えいに留意しつつ壁にも高圧水洗浄が適用可能と考えられます。拭き取り,ブラッシングの場合は,事前に拭き取り又はブラッシング回数と効果の関係を調査し,本施工における回数を決定することが必要です。

適用した除染方法の例(宅地)
図1 適用した除染方法の例(宅地)
壁の除染効果(除染方法と材質の違いによる低減率の比較)
図2 壁の除染効果(除染方法と材質の違いによる低減率の比較)
表1 宅地(屋根)の除染方法毎の特徴比較

 学校,工場などの大型建造物も同様の方法で除染しましたが,簡単な洗浄では効果のない広いコンクリート表面の除染には,小さな鋼球またはドライアイスを用いた空気圧式ショットブラストを用いました。除去されたコンクリート表面の薄い層は,吸引機で回収した後に除去物としました(鋼球は磁気選別して再利用しました)。

 建造物を除染した後に,周囲環境を除染しました。庭の植物をストリマーや芝刈り機,ハサミで刈り込んだ後に,土壌の上下入れ替えを実施し,必要があれば表層土を除去しました。屋根のひさしの下や屋根からの流出水が集まる排水溝にはホットスポットが見られることが多く,このホットスポットの除去に注意しました。砂利は,高圧水洗浄等で除染し,洗浄水は回収して処理しました。