1. はじめに

 東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により生じた,放射性物質による環境汚染への対処が喫緊の課題となっています。こうした状況を踏まえ,平成23年8月30日には「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」が議員立法により可決・成立し,公布されました。

 除染等の措置に係る目標値は,国際放射線防護委員会や原子力委員会の考え方を踏まえて設定されていますが,この目標を達成するためには,各省庁や関係地方公共団体,研究機関等の関係機関,事業者等が総力を結集し,できるだけ速やかに除染等を行うことが肝要となります。

 このような状況に鑑み,内閣府は,除染等の措置に係る目標を達成することを目的として「除染モデル実証事業」および「福島第一原子力発電所事故に係る福島県除染ガイドライン作成調査業務」(以下,「ガイドライン調査事業」という)を発注し,いずれも日本原子力研究開発機構が受託しました。

 除染モデル実証事業は,年間の追加被ばく線量が20mSvを超えるような高線量の地域を主な対象とし,土壌等の除染等の措置に係る効率的・効果的な除染方法や作業員の放射線防護に関わる安全確保の方策等を確立することを主な目的とします。

 一方,ガイドライン調査事業は,基本的に住民が居住することは可能であるが放射性物質による汚染が進んでいるやや放射線量の高い地域を対象とし,市町村単位での除染作業に必要となる技術的知見の蓄積と情報提供を行うことを主な目的とします。ここでは,両事業の実施概要と得られた成果について紹介します。