グラウンド

 表土の剥ぎ取りによる除染効果で,剥ぎ取り厚さと低減率の関係を調べた結果,剥ぎ取り方法による低減率の違いは顕著に見られませんでした。除染前に土壌中のセシウムの分析結果を基に剥ぎ取り厚さを決めて除染作業を実施したため,セシウムを土壌中に取り残すことが少なく高い除染効果を確認しました(表1)。除染を行う場合,事前に土壌調査を行いセシウムの土壌中の深度分布を踏まえて除染効果が十分得られる剥ぎ取り厚さを決めて,実施面積に基づき最適な施工のための除染方法を選定する必要があります。

 薄層で剥ぎ取る必要のある場合は,1 cm 程度で剥ぎ取りを管理できる改造されたハンマーナイフモア(土壌のほぐし)とスイーパー(ほぐされた土壌の回収)による剥ぎ取りを行いました。スイーパーのみでは,剥ぎ取り効率が悪いため,ハンマーナイフモア(草刈り機の軸を改造済)で表土のほぐしを行い,グラウンド表面をほぐした後スイーパーで掻き取りました(図1)。目標剥ぎ取り厚さとなるまで複数回同一部分を走行しました。薄く剥ぎ取りができるため,除去物の発生量を抑制することができますが,施工スピードが遅いため,大面積には適さない場合もあります。モーターグレーダーは,平らで広いグラウンドに利用し,表面の凹凸がある場合は,事前に振動ローラーによる地ならしを行った後にモーターグレーダーを利用し,さらにスイーパーを併用することで剥ぎ取りの精度が高くなります。掻き取った表土を溢散させず,取り残しを防ぐために,バックホウでかき集めることも重要です。

 大面積を除染するときは,切削幅が広い路面切削車による剥ぎ取りが効率的であり,剥ぎ取り厚さが均質にできる利点があります。但し,路面切削車などの大型重機は重いため,表面が柔らかいグラウンドの場合は事前に振動ローラーで大型重機が走行できる程度に締め固めたのちに除染します。大型重機での作業が困難なグラウンドの境界部では,人力やバックホウの剥ぎ取りを併用します。寒冷地の凍結した土壌においては,事前の調査による放射性セシウムの深度分布を踏まえて決定された剥ぎ取り厚さでの剥ぎ取りができず,それ以上の厚さの土壌を剥ぎ取らざるを得ない場合がありました。また,凍結した土壌が日中融けると,土壌が緩んで重機を使用した施工ができなくなる事象もありました。

 排水処理が施されているグラウンドでは,天地返しを行うと,排水処理の施工部分を壊してしまう可能性があるため,天地返しは適用できませんが,排水処理が施されていない未舗装駐車場や空き地などでは,天地返しによる除染は効果的でありました。天地返しの施工スピードは剥ぎ取りによる除染方法に比べて劣るものの,剥ぎ取り残し・剥ぎ取りこぼしが極めて少なく,除染エリア外へ搬出する除去物が発生しないなど,天地返しにもメリットがあります。

 グラウンドの除染で得られた知見としては,・グラウンド土壌中の放射性セシウム濃度の深度分布を測定した結果,ほとんどの地点において,表面から深度3~5cm程度の範囲に90%以上が残留,・凹凸がある場合は凹部が削り残されることになるため,事前に平らにならす必要があり,剥ぎ取りが不十分な場所については人力で剥ぎ取ることが重要,・事前に試験区間を設け,剥ぎ取り深度と低減率の関係を調査し,剥ぎ取り深さを決定することが重要であるということが分かりました。

表1 グラウンドの除染方法毎の特徴比較
適用した除染方法の例(グラウンド)
図1 適用した除染方法の例(グラウンド)