除去物の減容化手法の選定の考え方

減容方法(手法)の選定

 除去物の減容は,仮置場の面積や安全性を左右するため,保管コストの低減化の上で非常に有効な手段です。特に腐敗性の「可燃性除去物」については,焼却による減容により灰の形に無機化することで除去物の形態を安定化することも可能となるため,保管が簡略化・安全性向上の観点から重要です。したがって,可能であれば除染作業に組み入れることも視野に置く必要がありますが,減容化による放射性物質の濃縮により,減容物の表面線量率も上がる場合があるため,取り扱いには十分注意する必要があります。

 なお,除染作業に伴って発生する除去物には,「可燃性除去物」,「不燃性除去物」と「可燃性除去物と不燃性除去物の混合物」があり,減容方法としてはそれぞれ以下の手法が考えられます。

ⅰ)可燃性除去物;木質系のガレキや草木,枝葉といった除染対象として発生する腐敗可燃性のものと,除染作業で使用するタイベックスーツやウェス,ビニール袋,養生シート類などの可燃性のものが該当します。

木材破砕機,チッパーによる減容

 木質系の除去物については,木材破砕機,チッパーによる減容化処理が適用可能であり,場合によっては1/10程度にまで容量を小さくすることができます。比較的減容率*1が高く,設備も小規模ですむため推奨できる手法となります。また,これらの機器は林業を中心に一般化していることから比較的利用しやすい環境にあります。なお,本処理を実施する際は,対象物にもよりますが木屑等の粉塵の飛散があるため,防塵シートを周囲に敷設する等の処置を考慮することが望ましいです。

焼却による減容

高温焼却処理(仮設)800℃以上

焼却炉は,減容率*1が96%~99%と高いことから,特に腐敗性の「可燃性除去物」の処理に能力を発揮することが期待されます。また,発生するタイベックスーツ等についても,日々の管理の中では同様に効果が期待されます。 排気系へフィルタ等を設置することで,セシウムは主灰及び飛灰として回収され排気へのセシウム移行も低く抑えられるため非常に有効な処理方法です。設備が比較的大規模となることや,焼却灰の放射性物質濃度が相当高くなるため取扱いに注意が必要ですが,推奨できる手法です。

低温焼却処理(仮設)400℃以下

ロータリードライヤなどの低温焼却炉によっても「可燃性除去物」の処理を効果的に進めることが可能です。減容率*1については75%~90%と高く,蒸し焼き状態となった処理物中にセシウムはその大半が残ります。また,土壌等との分離が完全でなくとも焼却が可能であることから,植物根などの腐敗性の「可燃性除去物」に効果的です。

圧縮による減容

重量物積載による減容や下草集積機(ロールベーラ),葉たばこ梱包器といった草木類に適用可能な減容方法があります。重量物積載による方法で約5割程度フレキシブルコンテナに入れた除去物を圧縮減容できます。また,刈り取った下草を効果的に集積する方法としてロール状にする下草集積機なども大量に発生する下草に対しては効果的です。

ⅱ) 不燃性除去物;土壌,コンクリート,アスファルト等が該当します。
不燃性除去物のうち大半を占める土砂等の減容化については,除染モデル実証事業で試験した土壌洗浄試験によるセシウム吸着の多い細粒土壌の回収や設定した汚染基準値以上の土壌と未満の土壌に分別する「スキャンソート」等は処理後の土壌等の再利用が可能という点で「不燃性除去物」に対する減容化手法と言えますが,大量に発生する土壌の放射能濃度等との関係で効果的か否かを選定する必要があります。

ⅲ)可燃性除去物と不燃性除去物の混合物;植物根混じりの土壌等が該当します。
ツイスターと呼ばれる回転式粉砕機と振動ふるい機を併用して,植物根と土の分別を実施する技術については,粘性が高い土壌の場合の適用性には課題が残るものの,比較的乾いた植物根混じりの土壌に対しては,分離性能が良く発揮されるため,低温焼却処理などと組み合わせることにより,腐敗性の「可燃性除去物」の混合した不燃性除去物の減容処理に有効です。

ⅳ)その他
水田の剥離土壌や河川等の底泥,水処理汚泥等高含水の除去物も発生します。これらについては,仮置場において自然に脱水されたり,また,特殊素材のシート,袋などを用いて脱水することが可能であり,脱水することで高い場合50%に近い減容率*1が得られますが,その場合,脱水による仮置場の変形や浸出水の対処が必要となることから,仮置場での管理を難しくすることとなり,積み直しや浸出水の回収及び分析,排水などの作業が追加されることになるため,積載方法や処理方法等を工夫しておくことが重要です。

*1 減容率=[(減容前の体積-減容後の体積)/減容前の体積]×100