TS切削機による道路の除染方法

【除染モデル実証事業編】報告書 2.4.2(1)①(b) “Ⅳ道路”より

TS切削機で道路表面を切削する除染を行いました。TS切削機とは,路面切削機の一つであり,アスファルトやコンクリート舗装面を回転刃によって削り取る機械です。

TS切削機は,通常の路面切削機による切削と比較し,切削ドラムのビット間隔がより狭く(一般の路面切削機の切削ドラムは約15mm間隔でビットを配置しているのに対して,TS切削機ではビット間隔が6~8mmの細密切削ドラムを使用します),表層を薄くかつきめ細かく切削することが可能であり,切削厚さが一定に保たれるため,安定した除染効果や除去物の発生量抑制が期待できます。

TS切削機による道路の除染状況
TS切削機による道路の除染状況

TS切削機を用いたアスファルト舗装面の切削は大熊町役場での除染結果に限定されますが,表面汚染密度低減率は非常に高い値を確認できました。

TS切削機の場合,ブラスト作業と同様に,骨材,ストレートアスファルト部分のいずれも切削します。今回TS切削機に使用したファインミリングドラムは,除去物量を抑制するために切削厚さを約5mmに設定し除染を実施しましたが,舗装表面が歪曲している箇所等では十分な切削厚さを保持できないことがありました。

また,切削したアスファルト廃材はコンベヤシステムにより迅速に大型のダンプトラック等に廃材を積み込むことができますが,一部の廃材が舗装面上に取り残されることがあります。

大熊町役場周辺における実施結果(役場駐車場(アスファルト舗装))
(路面切削機による舗装切削(平均切削厚さ約5mm))
  除染前 除染後 低減率(%)
表面線量率(1cm)(μSv/h) 17.1 4.7 73
表面汚染密度 42,900 3,700 91
TS切削機による道路の除染(大熊町)

TS切削機による道路除染の具体的な流れ

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

道路におけるTS切削機を用いた除染の流れを以下に示します。

1.目的

道路のアスファルト舗装の除染方法として,TS切削機による表面切削の手順を示します。

2.作業項目

  • 使用機材点検
  • 切削・集積
  • 詰込み
  • 運搬

3.作業手順

(1)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また,安全対策が十分であることを確認します。

(2)切削・集積
TS切削機を用いてアスファルト舗装を任意の深さで切削します。切削屑はTS切削機に付帯しているベルトコンベアでトラックに集積します。路面に残った粒子の細かい切削屑は飛散することがありますので,搭乗式清掃機や集塵機を用いて回収します。

(3)詰込み
集積した切削屑をバックホウまたは人力でフレキシブルコンテナに収納します。

(4)運搬
フレキシブルコンテナをトラック等で一時仮置き場まで運搬します。

4.使用機材

保護具(半面マスク,ゴム手袋等),TSアスファルト切削機,搭乗式清掃機または集塵機,バックホウ,トラック,トラッククレーン

5.留意事項等

(1)重機の旋回範囲,死角には立ち入りできないようカラーコーン等で作業エリアを明示するようにします。

(2)路面に凹凸がある場合は,除染できない部分が残ります。また,側溝付近やマンホール周辺等の狭隘部は切削できないため,他の方法(超高圧水洗浄ショットブラスト等)と併用する必要があります。

(3)施工スピードは,路面上の障害物(マンホール,横断側溝等)や一回の施工距離によって変動します。

(4)改善点としては,密粒度アスファルト舗装の場合,放射性物質の90%は表面から2~3mmまでの深さに付着・残留しているため,除去物減容の観点から切削精度を向上させることが望ましいと思われます。

TS切削機による道路除染の歩掛例

道路に おいて“TS切削機”を用いた除染の本事業における歩掛例を以下に示します。

  • 内容:アスファルト舗装面切削(TSアスファルト切削機),集積,詰込,運搬(道路,アスファルト舗装面)
  • 歩掛表
(1,380m2当り)

名称・項目

仕様

単位

数量

【 労 務 費 】

 

 

 

土木一般世話役

 

人日

1.40

普通作業員

 

人日

5.00

運転手(特殊)

 

人日

2.00

運転手(普通)

 

人日

0.80

【 材 料 費 】

 

 

 

大型土のう

耐候性(3年)

13.40

【 機械損料 】

 

 

 

バックホウ クローラ型 60kW

平積容量0.28m3(運)排対2次

台時

3.00

バックホウ クローラ型 60kW

平積容量0.28m3(供)排対2次

台日

1.00

ホイールローダ
(トラクタショベル) 16kW

山積容量0.3m3(供)
排対2次

台日

1.00

ホイールローダ
(トラクタショベル) 16kW

山積容量0.3m3(運)
排対2次

台時

3.00

ダンプトラック
普通・ディーゼル246kW

積載質量 10t積 (運)

台時

4.80

ダンプトラック
普通・ディーゼル246kW

積載質量 10t積 (供)

台日

0.80

TS切削機

B2m(運)

台時

6.00

TS切削機

B2m(供)

台日

1.00

【 諸雑費 】

 

1.00

留意事項: TS切削機は数が少ないので,なかなか手配できません。

TS切削機による道路除染の技術評価

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

TS切削機による道路除染の手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。

整理番号

道-8

大分類

道路

中分類

舗装

小分類

アスファルト舗装面

除染手法

TS切削機(TSファインミリングドラム)による切削

内容

切削,回収,詰込,運搬

除染方法

<除染手順>

アスファルト舗装切削,集積:  →詰込: →運搬(除染箇所の一時集積所まで):

TS切削機,トラック バックホウ トラッククレーン

<除染概要>

TS切削機でアスファルト舗装面を任意の厚さで切削し,切削屑は切削機に付帯するベルトコンベアでトラックへ集積します。バックホウでフレキシブルコンテナに詰込み,トラッククレーンで除染箇所の一時集積場所へ運搬します(運搬距離100m)。

主要機械仕様

TS切削機(全長14,800mm,作業幅2,000mm),ダンプトラック,バックホウ,トラッククレーン

環境条件

適用環境条件

除染効果に影響する環境条件は見当たらない。

施工制約条件

舗装面が歪曲している場合,均質に舗装面を切削できず,切削残しが生じるため,除染効果が低下する可能性がある。

評価

除去物

施工スピード

(作業員数)

1,380m2/日(9人)

除去物発生量

80袋/ha程度(切削厚5mm程度)

除去物内容

切削屑

水処理方法

使用水量

汚染水回収方法

回収率

除染係数の目安

DF

22

低減率

95%

コスト(直接工事費>1,000m2

390円/m2

施工上の留意点

改善点

・震災の影響等により,路面に凹凸がある場合は,除染し残し部が生じます。また側溝付近,マンホール周辺等狭隘部は切削できないため,他の方法(超高圧水洗浄,ショットブラスト)と併用する必要があります(除染効果の確保)。

・その他,路面に残った粒子の細かい切削屑は飛散することがあるので搭乗式清掃機,集塵機との組み合わせが必要です。

・施工スピードは,路面上の障害物(マンホール,横断側溝等)や一回の施工距離によって変動します。

・密粒度アスファルト舗装の場合,放射性物質の90%は2-3mm以浅に付着・残留していることから,除去物減容の観点から切削精度の向上が必要です(改善点)。