宅地の除染方法の特徴の比較

2.4.2(1)④経済性に関する分析より

宅地における除染方法の,本事業における歩掛・作業性等の実績を以下に比較一覧で示します。なお,除染方法のコスト及び歩掛の評価方法については下記を参照下さい。

除染方法のコスト及び歩掛の評価について

除染方法

屋根除染

高圧水洗浄

ブラシ掛け

拭き取り

剥離剤塗布

 

低減率

焼付鉄板

10%程度

10%程度

0~16%

塗装鉄板

30%程度

5%程度

15~18%

粘土瓦

0~74%

50%程度

0~77%

1~53%

セメント瓦

30%程度

5%程度

0~3%

32~33%

スレート

22~23%

0~64%

10~24%

23~49%

除去物発生量

ほとんど無し

ほとんど無し

多少(ウエス)

多少(剥離剤)

二次汚染

飛沫が土壌に浸透あり

流末で水回収

ほとんど無し

無し

無し

コスト評価

ブラシ掛けよりコスト高

1090円/m2

ブラシ掛けよりコスト高

ブラシ掛けよりコスト高

施工スピード

ブラシ掛けより早い

140m2/日

ブラシ掛けより遅い

ブラシ掛けより遅い

(10m2/日)

(養生で1~3日必要)

歩掛

-

7人/日

-

-

適用性

屋根除染

剥離剤塗布による除染効果が他の方法よりも低減率が高い結果となったが,本作業に用いた剥離剤では養生に1~3日程度を要し,剥ぎ取り完了まで足場の撤去ができないなどの作業性のデメリットが大きい。また,高圧水洗浄については,ブラシ掛けと同程度の除染効果が期待できる結果となったが,洗浄水と共に飛散する土埃等の飛散防止・回収等の作業が必要となった。このような理由から,「拭き取り」「ブラシ掛け」が本事業では高評価となった。

除染方法

雨樋

壁面

高圧水洗浄

拭き取り

ブラッシング

低減率

60%程度

30~90%

20~30%

除去物発生量

少量

少量

無し

二次汚染

飛沫が土壌に浸透

あり

流末で水回収

(ほとんど無し)

ほとんど無し

コスト評価

1230円/m

1100円/m

100円/m2

施工スピード

160m/日

140m/日

640m2/日

歩掛

8人/日

6人/日

5人/日

適用性

雨樋

拭き取りと高圧水洗浄で低減率に顕著な違いはみられない。両者共まずまずの効果である。ただし,高圧水洗浄は洗浄水の飛散による二次汚染が発生するため,やや評価は落ちる。

壁面

壁面の除染では,ブラッシング以外に高圧水洗浄及び拭き取りを行ったが,拭き取りによる低減効果は極めて低かった。高圧水洗浄は,ブラッシングと同等の低減率であったが,洗浄水の飛散による二次汚染があるため,ブラッシングが最も効果的であると考える。

除染方法

表土剥ぎ取り

砕石洗浄

砕石除去

低減率

10~90%

60~95%

20~85%

除去物発生量

200-400袋/ha (2-3cm)

少量

200-400袋/ha

二次汚染

なし

なし

なし

コスト評価

590円/m2

930円/m2

820円/m2

施工スピード

530m2/日

210m2/日
(厚さ約10cm)

230m2/日

歩掛

8人/日

12人/日

7人/日

適用性

表土剥ぎ取り

高い低減効果を示した地区はあったが,低減率は10~90%とバラついている。ほとんどの場合,土壌を剥ぎ取る深さが増えると低減率は上昇した。

砕石洗浄

表面が比較的平滑な玉砂利の分級は非常に高い除染効果があった。しかし,表面の粗い砕石の場合は,これよりも大分劣る結果であった。

砕石除去

砕石・玉砂利で覆われるエリアでの放射性物質の浸透深度は様々であるため,低減率は非常にバラついた。適切に剥ぎ取り厚さを決定する必要がある。

除染方法

芝生除去(試験実施)

庭木剪定

インターロック(高圧洗浄)

低減率

80%程度

0~20%

30~80%

除去物発生量

200-500袋/ha

300袋/ha

なし

二次汚染

なし

なし

洗浄水の飛散あり

コスト評価

1500円/m2

740円/m2

1320円/m2

施工スピード

100m2/日

240m2/日

140m2/日

歩掛

6人/日

9人/日

9人/日

適用性

芝生除去(試験実施)

ソッドカッターによる深刈りの除染は,非常に効果があった。ただし,施工スピードは遅くコストが高いのが難点である。

庭木剪定

樹木の枯死を防ぐために刈り取れる枝葉は限定的であるため,本除染方法による低減効果はほとんどなかった。樹木を枯死させないレベルの剪定の見極めのために専門家の助力を得なければならないのは難点である。

インターロック(高圧洗浄)

本除染方法の各地区の低減率の平均値は約45%であった。洗浄水の飛散による二次汚染が発生するのは難点である。

除染方法

集塵サンダー
(コンクリートかんな)

超高圧水洗浄
(150Mpa以上)

高圧水洗浄
(10~20Mpa)

ショットブラスト

低減率

60%~80%
(回数による)

80%程度
(圧力, 回数による)

20~70%
(圧力, 回数による)

90%程度
(投射密度,回数による)

除去物発生量

ほとんど無し

30袋/ha

ほとんど無し

30袋/ha

二次汚染

ダスト吸引回収

多少あり

洗浄水吸引回収

ほとんど無し

流末処理

多少あり

ダスト吸引回収

多少あり

コスト評価

1940円/m2

1150円/m2

960円/m2

570円/m2(中型)

施工スピード

80m2/日

330m2/日

100m2/日

540m2/日(中型)
850m2/日(大型)

歩掛

7人/日

4人/日

2人/日

5人/日

適用性

何れの方法においても高い除染効果があったが,コンクリートたたき部は宅地の中では放射性物質の付着する割合は低い。
集塵サンダーの施工スピードの低さとコストの高さが目に付く。

◎:総合的に効果が非常に高かったもの, 〇:総合的に効果が高かったもの, △:総合的に効果が中程度であったもの,▲:総合的に効果は限定的であったもの(これらの評価はモデル事業での実績に基づくものです)。