Topics福島

トピックスふくしま No.130

2026.4.16


研究成果 活動報告 CLADS



福島の森の今を知る -放射線モニタリングの取組-

無人ヘリコプターを用いた実証試験


1.実証試験の実施


福島廃炉安全工学研究所では、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、飛散した放射性物質の状況を把握するため、放射線のモニタリング(測定・観測)を継続的に行っています。これまで生活圏を中心に除染などの線量を下げる取組が進められてきました。その結果、避難指示は段階的に解除され、住民の帰還や生活環境の再建が少しずつ進んでいます。一方で、帰還困難区域の多くを占める森林や山間部では、いまだ避難指示解除の見通しが立っていません。
本研究所では今後の特定帰還居住区域の解除や森林・林業の再生に向けて山地森林域の詳細な空間線量率情報の取得を目的として、新たなモニタリング手法の開発に取り組み、福島県葛尾村において実証試験を実施しました。
この取組をより多くの方に知っていただくため、2025年11月、葛尾村で行われた実証試験の様子を阿武隈風力発電所の展望施設にて報道関係者に公開しました。今回はその公開の模様と、私たちの取組について紹介します。

2.実証試験公開の様子


◆概要説明と現場確認


当日は、まず山地の森林の環境モニタリングの概要、実証試験の実施場所である阿武隈風力発電所の紹介、および地域連携の取組について説明しました。その後、衛星通信機や放射線検出器を搭載した無人ヘリコプターによる放射線モニタリングのデモフライトを実施しました。



概要説明の様子
無人ヘリコプターの機能を確認

無人ヘリコプターを操作して離陸する様子
森林の上空へ飛んでいく無人ヘリコプター

地上のオペレーターの合図で無人ヘリコプターはゆっくりと離陸し、そのまま森林の上空へと進んでいきました。無人ヘリコプターは約80メートル間隔の飛行ルートに沿って森林上空を飛行しながら空間線量率のデータを取得していきます。


森林環境における無人ヘリコプターを活用することには、次のような利点があります。

・低高度・低速度での測定が可能なため、森林内の細かな放射線量分布を把握できる。
・人が立ち入りにくい場所でも、安全に測定が行える。


◆地上でも同時に計測を実施


今回の実証試験では、上空からの計測に加え、地上での放射線計測も一部で実施しました。


森林を歩きながら放射線量を測定する作業員

作業員が実際に森林に入り、上空からは把握しにくい場所の状況を確認します。
森林の中は木々に遮られてGPSによる正確な位置特定が難しいため、自己位置推定機能を備えた放射線検出器を使用します。

地上計測では次のような利点があります。
・地上1メートルでの放射線量を測定できる。
・地点ごとのデータを丁寧に取得できる。

3.見えないものを「見える化」


取得したデータを活用することで、目には見えない空間線量率を「見える形」で確認することができます。
(※以下の資料は「令和7年度成果報告会研究者個別報告『森林域活用のための放射線モニタリング』/佐々木美雪」より抜粋)


※画像をクリックすると拡大されます。

上空と地上の測定結果を照合する。

・上空:広い範囲を効率よく把握できる。

・地上:局所的ではあるが高い精度で測定できる。

山地森林の空間線量率を高精度に把握することで、今後の避難指示解除の判断や森林の利活用計画の基礎データとして活用できます。

今回、福島県葛尾村で実施した実証試験では、「上空からの広域的な計測」と「地上での詳細な計測」を組み合わせることで、森林における空間線量率の分布をより正確に把握できる手法を示しました。
このように空間線量率の分布状況が明らかになることで、その区域でどのような活動が可能かを検討するための基礎的なデータとなり、避難指示の解除の判断や、将来的な森林の利活用を考えるうえでも、重要な役割を果たします。

原子力機構では今後も測定方法の改良や精度の向上に取り組み、地域の安心・安全につながる信頼性の高いデータを提供できるよう、調査を継続してまいります。



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