Topics福島
トピックスふくしま No.112
2022.9.28
地衣類が、放射性セシウムを「記録」する仕組みに迫る
不思議な生きもの 名前に“コケ”と付くけれどコケではなく、キノコと同じ菌類だけれど、藻類と共生する不思議な生きもの。それが地衣類です。
記録媒体としての性質 地衣類はその性質から、環境汚染レベルを記録する指標(バイオモニター)としても使われています。
「どこで」「どのように」記録するか 今回私たちは、2つの状態の放射性セシウム(イオンと粒子)について、それらの場所をミクロスケール(5/1000 mm)で特定する手法を確立しました。
モニタリング研究で登場する地衣類たち 地衣類は世界中に広く分布しており、私たちの身近なところにも存在します。
01 ウメノキゴケ 02 ハナゴケの仲間 日本を代表すると言える地衣類です。 トナカイが食べる地衣類"トナカイゴケ"として有名です。 03 サルオガセの仲間
岩の上、木の幹やコンクリートの表面など、身近な場所で多くの地衣類を観察できます。
地衣類には植物のような根が無く、大気中から元素を体内に取り込み、保持するという性質があります。
菌糸から成る層状の構造をしている。
福島第一原子力発電所事故以降、日本国内の地衣類も放射性セシウムを長期間にわたって保持していることが分かってきました。
しかし、地衣類が体内の「どこで」「どのように」放射性セシウムを保持しているかは長年の謎でした。
その結果、地衣類は、イオン状のものは体内の下部で、粒子状のものは表面や中心部付近で安定的に保持していることが分かりました。
この手法は、キノコや山野草など、他の生物や環境試料に対しても利用できるため、それらの放射性セシウムの保持メカニズムの解明にも役立つと考えられます。
今回は、世界のモニタリング研究で登場する地衣類のうち、福島県内で観察できる3つを紹介します。
市街地から里山まで、街路樹や石碑の表面など、身近な場所にいます。
今回の研究で調べられた地衣類です。
鉄道模型などのジオラマにもよく登場します。
亜高山帯(吾妻山(浄土平)など)で観察できます。
樹皮の表面や枝からぶら下がるように生えている地衣類です。
空気がきれいで湿潤な低地から亜高山帯(田代山湿原、尾瀬、西吾妻山など)で観察することができます。
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