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用語解説
規制基準値
原子力発電所などから環境中に放出される放射性物質の量は、国際的な勧告に基づき、人体への影響が生じない量が規制基準値として定められています。
放射性物質はその存在の有無や含まれている種類の多さではなく、「追加的な公衆被ばく線量(人体に与える影響)を、年間で1 mSv未満にする」ことを基本に規制基準値が定められています。
これはICRP(国際放射線防護委員会)という国際機関の勧告に基づいています。
液体に関する基準では、『その濃度の水を、生まれてから70歳になるまで毎日約2リットル飲み続けた場合に、平均の線量率が1年あたり1 mSvに達する濃度」が設定されています。
規制基準値は、どの原子力施設においても一律に適用されます。
ALPS処理水の海洋放出などを行う際は、ALPSなどによる放射性物質の浄化処理に加え、ALPSで除去ができないトリチウムの濃度を下げるため、希釈(海水で100倍以上に)が行われます。これは、ALPS処理水中に存在する規制基準値以下の「トリチウム以外の核種」の濃度をさらに低くすることにもつながります。
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告示濃度、告示濃度比総和
環境中に放出することができる放射性物質の濃度限度は関係法令(告示)※で核種ごとに定められており、これを告示濃度と呼びます。また、複数の放射性物質を含む場合は、核種ごとの濃度に対する告示濃度限度に対する割合を足し合わせて評価することになっており、この足し合わせた値を告示濃度比総和と呼びます。
※:原子力規制委員会告示、「放射線を放出する同位元素
の数量を定める件」(令和二年三月十八日)
国際的な勧告をもとに定められた日本の規制基準では、原子力施設から環境中に放出する場合の液体・気体廃棄物に含まれる放射性物質の濃度が、核種に応じて決められています。
水中・空気中に特定の核種が含まれる場合、どのくらいの濃さまで許容することができるかは、関係法令(告示)で具体的な値が定められており、「告示濃度」とも呼ばれます。
ALPS処理水のように複数の放射性物質を含む場合は、規制基準値は含まれている複数の放射性物質の影響を総合的に考慮して定められます。つまり、特定の放射性物質の有無や、放射性物質ごとの含有量の多い、少ないではなく、総和として規制基準値を満たすように管理をするという考え方です。このようなケースでは、「告示濃度比総和」と呼ばれる考え方が用いられます。
「告示濃度比総和」とは、液体・気体廃棄物に含まれる核種それぞれの濃度を、告示濃度限度で割った値(告示濃度に対する割合)の合計値のことです。この値が1以下であれば、放射性物質の放出基準を満足しているとされます。
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放射能測定法シリーズ
放射能測定法シリーズは、トリチウムなどの環境中に存在する放射性物質を効率よく、かつ正確に分離・定量するための方法として、国により定められているマニュアルです。
放射能測定法シリーズは、環境中に存在する放射性物質を効率よく、かつ正確に分離・定量するための方法として、環境試料などの放射能分析・測定方法の基準となるマニュアルです。現在、トリチウムの分析方法を含め、36種のマニュアルが整備されています。
福島第一原子力発電所の事故の知見や最新の技術などを反映するため、原子力規制庁により順次改定が進められています。
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不確かさ
分析値にはさまざまな要因で、ある範囲の中でばらつきが生じます。このばらつきがどの程度なのかを表す指標が「不確かさ」です。
不確かさは分析条件に依存するため、分析の実施者によってそれぞれ異なります。
ALPS処理水の分析においては、試料の分取法、分析器具や機器の校正と使用環境、前処理法など分析プロセスの個々の要因に加え、作業者の熟練度といった人的要因など複合的な要因による一定のばらつき(不確かさ)があり、その程度を評価する必要があります。低濃度の試料の分析では、わずかな要因の違いが分析値へ影響を及ぼしやすくなるため、不確かさは大きくなります。不確かさの評価において考慮すべき要因の抽出には一律の手法があるわけではなく、分析の実施者が分析方法・施設、分析に対する熟練度に応じて設定します。
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ISO/IEC17025の認定
ISO/IEC17025の認定は、トリチウム分析について、国際規格に基づいた品質管理体制が確立されており、分析結果についての信頼性が国際的に認められたことを示すものです。
〇試験所・校正機関が正確な測定/校正結果を生み出す能力があるかどうかを、権威ある第三者認定機関が認定する規格です。
〇ISO/IEC17025試験所認定と呼ばれ、製品検査や分析・測定などを行う試験所及び計測機器の校正業務を行う校正機関に対する要求事項が定められています。
〇製品管理・品質管理を行ううえでのマネジメント力と、信頼性のある試験/校正結果を生み出す技術力等、規格の要求事項に沿って審査が行われ、
その試験所・校正機関が認定を取得するのに妥当であると判断された場合に認定されます。
PLJAによる解説
https://www.pjla.jp/iso17025/iso17025/
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