バックグラウンドの影響の考慮方法(事例)

 放射性物質が面的に分布しているため,GM計数管型サーベイメーターを用いて表面汚染密度を測定する場合,検出部の端窓面直下の測定対象面以外から放射線が入射することが避けられません。本報告書では測定対象面以外から検出器に入射する放射線による寄与分をバックグラウンドと呼びます。

 除染作業により当該地点の表面汚染密度が低下しても,未除染の地域に由来するバックグラウンドが計測されてしまうため,除染前後の表面汚染密度の低減率あるいは除染係数が実際より小さく算出されることがある可能性に注意する必要があります(図1参照)。

 そこで,除染効果を評価するためには,バックグラウンドの影響を考慮する必要があり,それにはコリメータを組み合わせた測定もあります(図2)。なお,一般環境中では,コリメータを使用しても外部からの影響を全て排除できるものではなく,緩和できる程度であることに留意が必要です。

除染前後のバックグラウンド
図1 除染前後のバックグラウンド
コリメータを使用した測定作業の例
図2 コリメータを使用した測定作業の例

1. コリメータ仕様

  • コリメータは,GM計数管型サーベイメーターの検出器が十分に隠れる大きさの鉛製の円筒管形状のものがよく使用されます。
  • 除染作業前後の表面汚染密度を比較し,除染効果を評価する場合はコリメータ仕様(外径,肉厚,高さ,材質等)を統一しておく必要があります。

2. バックグラウンドを考慮した計算方法

  • GM計数管型サーベイメーターを使用し,コリメータなしとコリメータありの2種類の測定を行います(図3)。
  • バックグラウンドは,測定対象面以外からのβ線およびγ線に由来します。β線は厚さ3mm程度のアクリル板1枚で遮へいできるため,通常使用されるコリメータを使用した場合,ほぼ全量が遮へいされます。一方,γ線は,コリメータによって一部遮へいされますが,残りは検出器に入射します。コリメータを透過する割合を透過率と呼びます。
  • 透過率は,放射線のエネルギー,透過層の厚さ(遮へい材厚さ),材質により決定されます。例えば,鉛板の137Cs半価層(ガンマ線が半分になる厚さ)は7mmです。なお,遮へい材が十分に厚いと,透過率をゼロとみなせる場合があります。
  • 測定対象面からのβ線とγ線による寄与をそれぞれβとγ,バックグラウンド(測定対象面以外から)のβ線とγ線による寄与をそれぞれβBGとγBGと定義します。また,透過率をSとします。さらに,コリメータなしの場合の計数値をX1(cpm),コリメータありの場合の計数値をX2(cpm)と定義します。
  • バックグラウンドの計数値は,下式により計算できます。
  • バックグラウンドの寄与を考慮した正味の計数値X0(cpm)は,下式により計算できます。
コリメータによる遮へい効果概念図
図3 コリメータによる遮へい効果概念図

3. その他

  • コリメータの測定対象面への接触によって汚染する可能性があるため,養生と除染を適宜行う必要があります。
  • コリメータで推定したバックグラウンド値は,β線寄与分に関する情報は地表面材質など未だ検討の余地があること,セシウム134から発するγ線のエネルギーはセシウム137とやや異なること,コリメータ上部方向からの回り込みの程度など,なお誤差を含むものであることに留意します。