表土剥ぎ取りによる宅地庭部の除染方法

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2(1)①(b)Ⅰ宅地より

庭で行った除染は,建物の除染と比べると,重機による実施が一部可能となることが特筆すべき点です。また,雨水等により土埃等が集積する箇所はホットスポット化している場合が多く,この箇所を重点的に測定してホットスポットの位置を明確にし,除染を行いました。庭の除染は,表面部の剥ぎ取り,除去が中心となります。

庭の土壌のエリアは,土壌表層を人力およびバックホウにより剥ぎ取りました。草が生えている場所については,これを刈り取った後に表土を剥ぎ取りました。剥ぎ取り厚さについては,事前の土壌モニタリング結果から,放射性物質の80%以上が除去できる厚さとしました(具体的には1~15㎝)。雨だれ部分は基本的に水が浸透しやすい構造になっているため,庭の他箇所と比較して剥ぎ取り厚さは厚くなりました。

人力による表土剥ぎ取り作業状況
人力による表土剥ぎ取り作業状況
バックホウによる表土剥ぎ取り作業状況
バックホウによる表土剥ぎ取り作業状況

宅地の裏側には山が迫っている場合がたびたびあり,その場合,宅地と山の境界部は小規模な法面が宅地に近接して存在しました。法面部は比較的急峻で,草類に覆われている場合が多く,平地同様除草・表土剥ぎ取りを行いました。ただし,急峻な法面の場合は,表土剥ぎ取りによって法面の崩壊を助長する可能性があるため,法面の安定性を極力損なわないように,草類の根茎を残す形で表土を鋤取る方法として,鉄レーキや頑丈な熊手により掻き取るように剥ぎ取りを行いました。草類の根茎を含め表土を剥ぎ取った場合は,法面保護シートを設置したケースもありました。

人力による法面表土剥ぎ取り状況
人力による法面表土剥ぎ取り状況
法面保護シート敷設の例
法面保護シート敷設の例
浪江町権現堂地区における実施結果(下草刈り,落葉除去,表土剥ぎ取り(2cm~5cm))
  除染前 除染後 低減率(%)
空間線量率(1m) (μSv/h) 5.64 3.28 42
表面線量率(1cm)(μSv/h) 8.48 3.10 63
表面汚染密度 6,670 1,720 74

 

表土剥ぎ取りによる宅地庭部の除染(川内村)

表土剥ぎ取りによる宅地庭部の除染の具体的な流れ

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

宅地庭部における表土剥ぎ取りによる除染作業の具体的な流れを以下に示します。

1.目的

宅地における庭の除染方法として,表土の剥ぎ取りによる除染手順を示します。

2.作業項目

  • 使用機材点検
  • 現況確認
  • 表土剥ぎ取り・集積
  • 詰込み
  • 運搬

3.作業手順

(1)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また,安全対策が十分であることを確認します。

(2)現況確認
表土の状況や作業エリアの埋設物を確認します。また,作業上障害物となる庭木などの位置を確認します。

(3)表土剥ぎ取り・集積
人力および可能であればバックホウを使用して表土を剥ぎ取ります。広い場所については小型薄層表土剥ぎ取り機なども併用します。

(4)詰込み
剥ぎ取った表土をフレキシブルコンテナに収納します。

(5)運搬
フレキシブルコンテナをトラック等で一時仮置き場まで運搬します。

4.使用機材

保護具(保護メガネ,半面マスク,ゴム手袋等),スコップ,鋤簾,ツルハシ,バックホウ,小型薄層表土剥ぎ取り機,ダンプトラック

5.留意事項等

(1)重機の旋回範囲,死角には立ち入らないよう注意します。

(2)庭木の剪定作業を先行して行った場合,土壌表土の剥ぎ取り作業がし易くなるといった効果があります。

(3)本施工に先立ち,予め剥ぎ取り深さと除染効果の関係を把握し,必要剥ぎ取り深さを決定しますことが重要です。

(4)冬季は凍結します場合があり,人力での剥ぎ取りは困難なため,ミニバックホウの爪(平爪は不可)により剥ぎ取る必要があります(除染効果の確保)。

表土剥ぎ取りによる宅地庭部の除染の歩掛例

宅地の庭 の“表土剥ぎ取り”による除染の本事業における歩掛例を以下に示します。

  • 内容:表土剥ぎ取り(人力,ミニバックホウ),集積,詰込,運搬(宅地,庭)
  • 歩掛表
(530m 2当り)

名称・項目

仕様

単位

数量

【 労 務 費 】

 

 

 

土木一般世話役

 

人日

1.05

特殊作業員

 

人日

1.00

普通作業員

 

人日

4.50

運転手(特殊)

 

人日

1.00

運転手(普通)

 

人日

0.50

【 材 料 費 】

 

 

 

大型土嚢

耐候性(3年)

38.00

【 機械損料 】

 

 

 

小型バックホウ(ミニホウ)

クローラ型 18kW 

排出ガス対策型 0.06m3(供)

2次基準値

台日

1.00

小型バックホウ(ミニホウ)

クローラ型 18kW 

排出ガス対策型 0.06m3 (運)

2次基準値

台日

1.00

クローラ型・クレーン装置付 37kW      

積載質量 3.5t積 

クレーン 2t吊 (供) 

台日

1.00

クローラ型・クレーン装置付 37kW      

積載質量 3.5t積 

クレーン 2t吊 (運) 

台日

1.00

ダンプトラック 普通・ディーゼル88W     

積載質量 2t積 (供)            

台日

0.50

ダンプトラック 普通・ディーゼル88W     

積載質量 2t積 (運)            

台時

3.00

【 諸雑費 】

 

1.00

表土剥ぎ取りによる宅地庭部の除染の技術評価

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

表土剥ぎ取りによる宅地庭部の除染の手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。

整理番号

宅-5

大分類

宅地

中分類

小分類

未舗装

除染手法

薄層表土剥ぎ取り(D)

内容

表土剥ぎ取り(人力,ミニバックホウ),集積,詰込,運搬

除染方法

<除染手順>
表土剥ぎ取り:→集積・詰込:→運搬(除染箇所の一時集積場所まで):  
人力(鋤簾,スコップ)人力(鋤簾,スコップ)トラッククレーン
ミニバックホウミニバックホウ

<除染概要>
人力(鋤簾,スコップ等)やミニバックホウで表土を剥ぎ取り,集積し,フレキシブルコンテナに詰込む。トラッククレーンで除染箇所の一時集積所まで」運搬します(運搬距離100m)。

主要機械仕様

鋤簾,スコップ,ミニバックホウ,トラッククレーン

環境条件

適用環境条件

宅地の庭などが対象。除染効果に影響する環境条件は見当たらない。

施工制約条件

ミニバックホウが作業できる程度の広さが必要。

評価

除去物

施工スピード
(作業員数)

530m2/日 (8人)

除去物発生量

200~400袋/ha (剥ぎ取り厚2~3cm)

除去物内容

草,土壌

水処理方法

使用水量

汚染水回収方法

回収率

除染係数の目安

DF

1.1~10

低減率

10~90%

コスト(直接工事費>1,000m2

590円/m2

施工上の留意点
改善点

・放射能濃度の深度分布を把握し,剥ぎ取り深さを決定することが重要です(除染効果の確保,除去物量の適正化)。
・冬季は凍結する場合があり,人力での剥ぎ取りは困難なため,ミニバックホウの爪(平爪は不可)により剥ぎ取る必要です(除染効果の確保)。