ブラッシングによる建物の屋根の除染方法

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2(1)①(b)Ⅰ宅地より

ブラッシングによる屋根の除染は,屋根に水をかけながらデッキブラシでこすった後,再度水をかけて行いました。また,再汚染を避けるため,上部から下部へという順に洗浄しました。

屋根の除染は高所作業になることから,高所作業車もしくは足場や梯子が必要になる点に特徴があります。また,斜面かつ曲面に対して施すという観点から,人力による作業が中心となります。震災や津波による屋根の健全度への影響にも留意が必要です。また,厳冬期の除染では,除染時に使用した水が凍ることによる屋根の損傷にも配慮が必要です。

ブラシ掛けによる除染状況
ブラシ掛けによる除染状況
葛尾村における実施結果
  除染前 除染後 低減率(%)
表面線量率(1cm)(μSv/h) 1.75 1.37 22
表面汚染密度 4,000 2,300 43
ブラッシングによる建物の屋根の除染(富岡町)

ブラッシングによる建物の屋根の除染の具体的な流れ

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

屋根におけるブラッシングによる除染作業の具体的な流れを以下に示します。

1.目的

宅地における建物屋根部の除染方法として,ブラッシングによる除染手順を示します。

2.作業項目

  • 足場設置
  • 使用機材
  • 洗浄
  • 足場撤去

3.作業手順

(1)足場設置
現場の状況に応じて,高所作業車を用いるかあるいは仮設足場を設置します。

(2)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また,安全対策が十分であることを確認します。

(3)洗浄
人力(デッキブラシ・ワイヤーブラシ)により屋根を洗浄します。水は少量使用します。

(4)足場撤去
仮設足場を設置した場合はこれを撤去します。

4.使用機材

保護具(保護メガネ,半面マスク,ゴム手袋等,安全帯),デッキブラシ,ワイヤーブラシ,高所作業車,足場材

5.留意事項等

(1)高所作業車使用時には,周囲に立入り禁止柵を設け作業エリアを明示します。また,旋回および移動時には,周囲をよく目視確認し,人や既設構造物への接触を防止します。

(2)高所作業時には,安全帯を使用します。

(3)作業者は,高所作業車の旋回範囲,死角には立ち入らないよう注意します。

(4)事前にブラッシング回数と除染効果の関係または拭き取り(回数,材料)を調査し,本施工における仕様を決定することが重要です。

(5)除染効果の測定に当たっては,施工直後は浸透水により遮へいされていることから,乾燥後に表面汚染密度を計測することが重要です。

ブラッシングによる屋根の除染の歩掛例

建物の屋根に おいて“ブラッシング(水使用)”による除染の本事業における歩掛例を以下に示します。

  • 内容:作業足場設置,ブラッシング,水洗浄,洗浄水回収・運搬,作業足場撤去(宅地,屋根瓦,鉄板)
  • 歩掛表
(140m 2当り)
名称・項目 仕様 単位 数量
【労務費】      
土木一般世話役  
0.90
普通作業員  
4.30
運転手(特殊)  
1.00
運転手(普通)  
1.00
【機械損料】      
トラック 普通 137kW 積載質量4~4.5t積(運)
3.00
トラック 普通 137kW 積載質量4~4.5t積(供)
1.00
高所作業車
トラック架装型 65kW
ブーム型(直伸・屈伸式)
作業床高9m(供)

1.00
高所作業車
トラック架装型 65kW
ブーム型(直伸・屈伸式)
作業床高9m(運)

6.00
工事用高圧洗浄機
モーター駆動 5.5kW
吐出量30.8L/min
圧力7.8MPa(運)

1.00
工事用高圧洗浄機
モーター駆動 5.5kW
吐出量30.8L/min
圧力7.8MPa(供)

1.00
給水車 118kW タンク容量 3,800L (供)
0.50
給水車 118kW タンク容量 3,800L (運)
3.00
発動発電機
ディーゼルエンジン駆動 23kW
(超低騒音)排ガス対策容量25kVA
(供)2次

1.00
発動発電機
ディーゼルエンジン駆動 23kW
(超低騒音)排ガス対策容量25kVA
(運)2次

1.00
水槽(一般工事用)
鋼板製簡易水槽
容量3m 3(供)
1.00
型枠足場 枠組足場 8m>H
m 2
40.00
【諸雑費】   1.00
留意事項: 上記は,足場上(型枠足場,高所作業車)での作業歩掛です。

ブラッシングによる屋根の除染の技術評価

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

ブラッシングによる建物の屋根の除染の手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。

整理番号

宅-1

大分類

宅地

中分類

屋根

小分類

瓦(コケ付着),鉄板

除染手法

表面ブラッシング+水洗浄(A)

内容

作業足場設置,ブラッシング,水洗浄,洗浄水回収・運搬,作業足場撤去

除染方法

<除染手順>

作業足場設置:   →洗浄:         → 作業足場撤去:

高所作業車      人力            洗浄水回収・運搬(除染箇所の水処理設備まで):

作業足場     (水,デッキブラシ,金ブラシ)  トラック

 

<除染概要>

高所作業車または作業足場を組み,人力(水,デッキブラシまたは金ブラシ)で洗浄します。洗浄後,作業足場を撤去します。洗浄水はバケツ等で回収し除染箇所の水処理設備まで運搬します(運搬距離100m)。

高所作業車を使用してのブラッシング

作業足場を使用してのブラッシング

主要機械仕様

高所作業車または作業足場,トラック

環境条件

適用環境条件

瓦のうち,セメント瓦,スレート瓦は除染困難。

施工制約条件

地震により屋根が剥がれていたり,割れていたりしない。

評価

除去物

施工スピード

(作業員数)

140m2/日 (7人) 

除去物発生量

ほとんど無し

除去物内容

汚泥

水処理方法

使用水量

数リットル/m2

汚染水回収方法

バケツ,タンク

回収率

100%

除染係数の目安

DF

粘土瓦;2,鉄板;1.1~1.5

低減率

粘土瓦;50%,鉄板;10~30%

コスト(直接工事費>1,000m2

1,090円/m2

施工上の留意点
改善点

・事前にブラッシング回数と除染効果の関係または拭き取り方法(回数,材料)を調査し,本施工における仕様を決定することが重要です(除染効果の確保)。
・その他,除染効果の測定では,施工直後は浸透水により遮へいされているため,乾燥後に測定(表面汚染密度)することが重要です。