【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2(1)①(b)Ⅱ大型構造物より
プールエリアの除染方法は,高圧水洗浄を基本とし,プールサイドのコンクリート面についてはデッキブラシを併用しました。
プール槽壁面・底面の表面汚染密度はプールサイドに比べて低い値を示していました。これは,もともとプール内部に水が入っていたため,空中から飛来した放射性セシウムが付着した塵などが直接付着しなかったこと,防水塗装により水溶性であるセシウムが内面の壁面にはほとんど固着していなかったことなどの理由が推定されます。
水圧は15MPaを目安としましたが,対象物の状況により5 Mpa~25 MPaの範囲で調整しました。
洗浄に用いた汚染水は,プールの排水孔から流れ出さないよう十分注意し,バキュームもしくはポンプでくみ上げました。集めた除染水はその後水処理設備に移送しました。
プール表面の防水モルタル等が劣化している場合は,除染水の侵入を避けるため,水圧を5 MPa程度に下げました。
コンクリートの打ち放し仕上げとなっているプールサイドは,高圧水洗浄とブラッシングを併用して洗浄を行いました。洗浄水はプールの排水口から流出しないよう十分注意を払い,全て回収しました。
防水塗装を施したプールサイドの場合,高圧水洗浄のみで高い除染効果がありました。
材質 | 適用技術 | 低減率(%) |
---|---|---|
プールサイド(コンクリート) | 高圧水洗浄+デッキブラシ | 63~68 |
プールサイド(防水塗装) | 高圧水洗浄 | 90 |
プール槽(防水モルタル) | 高圧水洗浄 | 18 |
プール槽(防水塗装) | 高圧水洗浄 | 63~97 |
除染前 | 除染後 | 低減率(%) | |
---|---|---|---|
空間線量率(1m)(μSv/h) | 1.16 | 0.98 | 16 |
表面線量率(1cm)(μSv/h) | 2.08 | 1.87 | 10 |
表面汚染密度 | 2,280 | 1,880 | 18 |
除染前 | 除染後 | 低減率(%) | |
---|---|---|---|
空間線量率(1m)(μSv/h) | 1.04 | 1.00 | 4 |
表面線量率(1cm)(μSv/h) | 1.92 | 1.29 | 33 |
表面汚染密度 | 4,100 | 1,520 | 63 |
高圧水洗浄によるプールの除染の具体的な流れ
【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より
プールにおける高圧水洗浄を用いた除染作業の具体的な流れを以下にします。
1.目的
プールの除染方法として,高圧水洗浄による洗浄手順を示します。
2.作業項目
- 使用機材点検
- プールの水の確認
- プールサイド洗浄
- プール洗浄
- 洗浄水回収
- 運搬
3.作業手順
(1)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また,安全対策が十分であることを確認します。
(2)プールの水の確認
プール内の水の放射性物質濃度を測定する。測定の結果,排水基準値以下であることが確認された場合は外部に排水し,そうでない場合はバキューム車を用いて水槽に回収します。
(3)プールサイド洗浄
高圧水洗浄機を用いて洗浄し,水切りスイーパーで仕上げます。
(4)プール洗浄
汚泥などの堆積物をバキューム車で吸引したのち,高圧水洗浄機を用いて洗浄し,水切りスイーパーで仕上げます。
(5)洗浄水回収
洗浄に使用した水はバキューム車で回収します。
(6)運搬
回収した水を水処理設備まで運搬します。
4.使用機材
保護具(保護メガネ,半面マスク,ゴム手袋等,合羽),水槽,高圧水洗浄機,水切りスイーパー,バキューム車
5.留意事項等
(1)高圧水洗浄機のノズル先を人に向けないよう注意します。
(2)周辺土壌が二次汚染しないように,除染水の飛散浸透防止策を講じることが重要です。
(3)高圧水を面に直角に,噴射口と除染対象との離隔を20㎝以下に維持することが重要です。
高圧水洗浄を用いたプールの除染の歩掛例
プールに おいて“高圧水洗浄”を用いた除染の本事業における歩掛例を以下に示します。
- 内容:表流水吸引・確認・放流,下層水・汚泥吸引,輸送,洗浄(高圧水洗浄機),洗浄水回収,輸送(大型構造物,プール)
- 歩掛表
名称・項目 |
仕様 |
単位 |
数量 |
【 労 務 費 】 |
|
|
|
土木一般世話役 |
|
人日 |
5.00 |
普通作業員 |
|
人日 |
17.00 |
運転手(特殊) |
|
人日 |
5.00 |
特殊作業員 |
|
人日 |
9.00 |
【 材 料 費 】 |
|
|
|
大型土嚢 |
耐候性(3年) |
袋 |
2.00 |
【 機械損料 】 |
|
|
|
トラック クレーン装置付 132kW |
積載質量4t 積2.0t吊(運) |
台時 |
30.00 |
トラック クレーン装置付 132kW |
積載質量4t 積2.0t吊(供) |
台日 |
5.00 |
バキュームカー |
容量3m3(運) |
台時 |
12.00 |
バキュームカー |
容量3m3(供) |
台日 |
2.00 |
発動発電機 ディーゼルエンジン駆動 19kW |
定格容量20kVA(運) |
台日 |
2.00 |
発動発電機 ディーゼルエンジン駆動 19kW |
定格容量20kVA(供) |
台日 |
2.00 |
工事用高圧洗浄機 モーター駆動 5.5kW |
吐出量30.8L/min 圧力7.8MPa(運) |
台日 |
9.00 |
工事用高圧洗浄機 モーター駆動 5.5kW |
吐出量30.8L/min 圧力7.8MPa(供) |
台日 |
9.00 |
給水車 118kW |
タンク容量3,800L(運) |
台時 |
30.00 |
給水車 118kW |
タンク容量3,800L(供) |
台日 |
5.00 |
【 諸雑費 】 |
|
式 |
1.00 |
高圧水洗浄を用いたプールの除染の技術評価
【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より
高圧水洗浄を用いたプールの除染の手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。
整理番号 |
大-10 |
|||
大分類 |
大型構造物 |
|||
中分類 |
プール |
|||
小分類 |
||||
除染手法 |
水処理+高圧水洗浄 |
|||
内容 |
表流水吸引・確認・放流,下層水・汚泥吸引,輸送,洗浄(高圧水洗浄機),洗浄水回収,輸送 |
|||
除染方法 |
<除染手順> 表層水の吸引: →確認・放流: 下層水,汚泥の吸引:→輸送(除染箇所の水処理設備へ): →洗浄 →洗浄水回収,輸送(同水処理設備まで) バキューム車 バキューム車 高圧水洗浄機,水きりワイパー バキューム車 <除染概要> バキューム車でプール内表流水を吸引し,確認の上放流します。次にバキューム車で下層水,汚泥などの堆積物を除染箇所の水処理設備まで搬送。高圧水洗浄機(5~25MPa)で壁,底面およびプールサイドを洗浄し,水きりワイパーで仕上げます。バキューム車で洗浄水を除染箇所の水処理設備まで搬送します(運搬距離100m)。 |
|||
主要機械仕様 |
バキューム車,高圧水洗浄機(最大50MPa),水切りワイパー |
|||
環境条件 |
適用環境条件 |
除染効果に影響するような環境条件は見当たらない。 |
||
施工制約条件 |
特になし。 |
|||
評価 |
除去物 |
施工スピード (作業員数) |
280m2/日 (6人) (1,700m2を6日間で施工) |
|
除去物発生量 |
10袋/ha程度 |
|||
除去物内容 |
汚泥 |
|||
水処理方法 |
使用水量 |
6~7m3/100m2程度 |
||
汚染水回収方法 |
流末部でのバキューム吸引 |
|||
回収率 |
100% |
|||
除染係数の目安 |
DF |
2.5~10.0 |
||
低減率 |
60~90% |
|||
コスト(直接工事費>1,000m2) |
80万円/式 |
|||
施工上の留意点 |
・高圧水を除染面に直角に噴射するとともに,噴射口と除染面との離隔を20㎝以下に維持することが重要です(除染効果の確保)。 |