【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2(1)①(b) “Ⅴ森林”より
落葉・腐植土・表土の除去については,線量率(地上1㎝)の低減率が最大で80%と,有意な低減が認められました。
一方,一部の地区では,樹木の根の存在により十分な剥ぎ取りが行えず,線量率の低減は限定的な場合もありました。
地表に対する除染による線量率の低減率は,地上1㎝よりも地上1mの方が小さいケースが多くあります。これは,腐植土・表土の剥ぎ取りにより地表からの放射線の寄与は小さくなりますが,枝葉や幹などからの寄与が相対的に大きくなったためと考えられます。今回のモデル実証事業で実施した除染方法について,効果の一例を以下に示します。
落葉・腐植土層除去・表土剥ぎ取りによる森林の除染の具体的な流れ
【除染モデル実証事業編】報告書 2.4.2(1)②章“除染作業手順”より
森林における落葉・腐植土層除去・表土層剥ぎ取りによる除染の具体的な流れを以下に示します。
1.目的
森林の平地における除染方法として,バックホウによる腐植土層および表土薄層の除去の手順を示します。
2.作業項目
- 使用機材点検
- 除去・集積
- 搬送・詰込み
- 運搬
3.作業手順
(1)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また,安全対策が十分であることを確認します。
(2)除去・集積
バックホウを用いて腐植土層および表土薄層を剥ぎ取り集積します。木の根周りなどの狭隘部は,鋤簾・竹箒等を用いて人力で行います。根周り部を剥ぎ取る際には,樹木に悪影響を及ぼさないように十分丁寧に行います。
(3)搬送・詰込み
除去物をバックホウもしくは人力で搬送しフレキシブルコンテナに詰込みます。
(4)運搬
フレキシブルコンテナをバックホウを用いて森林外まで移動させた後,トラッククレーン等で除染箇所の一時集積所まで運搬します(運搬距離100m程度)。
4.使用機材
保護具(半面マスク,ゴム手袋等),竹箒,レーキ,鋤簾,バックホウ(平爪付き),トラッククレーン
5.留意事項等
(1)本施工に先立ち,予め剥ぎ取り深さと除染効果の関係を把握し,必要剥ぎ取り深さを決定することが重要です。
(2)樹木に悪影響を及ぼさないように,根周りは人力(鋤簾,レーキ)で丁寧に剥ぎ取る必要があります。
(3)常緑樹林・混合樹林帯では,風雨により松ぼっくりや枯葉が落ちてしまい,除染後に再汚染が進むことがあります。
腐植土層除去・表土剥ぎ取りによる森林の除染の歩掛例
森林において“腐植土層除去・表土剥ぎ取り”による除染の本事業における歩掛例を以下に示します。
- 内容:腐植土層除去・表土剥ぎ取り(人力およびバックホウ),搬送,詰込,運搬(森林平地)
- 歩掛表
名称・項目 |
仕様 |
単位 |
数量 |
【 労 務 費 】 |
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土木一般世話役 |
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人日 |
0.65 |
普通作業員 |
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人日 |
2.90 |
運転手(特殊) |
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人日 |
1.40 |
【 材 料 費 】 |
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大型土のう |
耐候性(3年) |
袋 |
25.50 |
【 機械損料 】 |
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バックホウ クローラ型 60kW |
平積容量 0.28m3(運) |
台時 |
5.50 |
バックホウ クローラ型 60kW |
平積容量 0.28m3(供) |
台日 |
0.90 |
トラック |
積載質量 4t積 2.9t吊(供) |
台日 |
0.50 |
トラック |
積載質量 4t積 2.9t吊(運) |
台時 |
1.40 |
【 諸雑費 】 |
|
式 |
1.00 |
腐植土層・表土剥ぎ取りによる森林の除染の技術評価
【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より
腐植土層・表土剥ぎ取りによる森林の除染の手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。
整理番号 |
森-3 |
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大分類 |
森林 |
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中分類 |
地表 |
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小分類 |
平地 |
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除染手法 |
腐植土層除去+薄層表土剥ぎ取り |
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内容 |
腐植土層除去・表土剥ぎ取り(人力およびバックホウ),搬送,詰込,運搬 |
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除染方法 |
<除染手順> 腐植土層除去,表土剥ぎ取り: →搬送,詰込: →運搬(除染箇所の一時集積所まで): 木の根周り:人力(鋤簾,竹箒) 人力,バックホウ バックホウ,トラッククレーン その他:バックホウ(平爪付き)
<除染概要> 人力(鋤簾,竹箒)で木の根周りなどの狭隘部の腐植土層,表土を必要な深さ剥ぎ取ります。またその他の広いエリアはバックホウ(平爪付き)で剥ぎ取ります。それぞれ集積し,フレキシブルコンテナに詰込みます。森林外までバックホウで運搬し,トラッククレーンで除染箇所の一時集積所まで運搬します(運搬距離100m)。 |
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主要機械仕様 |
バックホウ(平爪付き他),トラッククレーン |
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環境条件 |
適用環境条件 |
森林や公園の平坦地が対象。除染効果に影響する環境条件は見当たらない。 |
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施工制約条件 |
バックホウの走行が困難な傾斜地や凹凸地などでは作業が困難。 |
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評価 |
除去物 |
施工スピード (作業員数) |
220m2/日(5人) |
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除去物発生量 |
1,000~2,000袋/ha |
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除去物内容 |
落葉,腐植土 |
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水処理方法 |
使用水量 |
― |
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汚染水回収方法 |
― |
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回収率 |
― |
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除染係数の目安 |
DF |
1.3~5 |
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低減率 |
20~80% |
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コスト(直接工事費>1,000m2) |
890円/m2 |
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施工上の留意点 改善点 |
・剥ぎ取り深さ(腐植土層までか,表土までか)については,除染効果との関係を把握し,必要剥ぎ取り深さを決定することが重要です(除染効果の確保,除去物量の適正化)。 ・その他,樹木に悪影響を及ぼさないように,根回りは人力(鋤簾,レーキ)で丁寧に剥ぎ取る必要があります。 ・また,常緑樹林,混合樹林では,除染中や除染後も風雨により松ぼっくりや枯葉が落ちてきて再汚染が進むことを認識しておく必要があります。 |