【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2(1)①(b)章“Ⅲ 農地”より
土壌を固める薬剤を農地に散布し,固化した土壌表層を分離回収機あるいはバックホウにより削り取る除染を実施しました。
作業は,対象エリアの草を刈った後,農地表面への固化剤の散布,養生(一定期間の静置),固化した表層土壌の分離回収機あるいはバックホウによる剥ぎ取り及び回収の順で実施しました。
固化剤を用いた表土剥ぎ取りでは,固化剤を散布することで表土が灰白色にマーキングされるため,取り残しや取りこぼしの目視確認が可能となることによる作業の効率化や,表土を固化することによる土壌の飛散抑制効果が期待できます。
本除染では,固化剤にマグネシウム系固化剤またはセメント系固化剤を使用しました。これらの固化剤は,氷点下では固化しないため,冬期の使用には,注意が必要です。
除染前 | 除染後 | 低減率(%) | |
---|---|---|---|
空間線量率(1m) (μSv/h) | 7.86 | 2.91 | 63 |
表面線量率(1cm)(μSv/h) | 11.66 | 3.27 | 72 |
表面汚染密度(cpm) | 5,020 | 1,450 | 71 |
表土固化剤を用いての表土剥ぎ取りによる農地の除染の具体的な流れ
【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より
農地における,表土固化剤を用いての表土剥ぎ取りによる除染作業の具体的な流れを以下に示します。
1.目的
水田・畑の除染方法として,土壌を固化させての表土層の剥ぎ取りの手順を示します。.
2.作業項目
- 使用機材点検
- 固化剤散布
- 養生
- 表土の剥ぎ取り・集積・詰込み
- 運搬
3.作業手順
(1)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また,安全対策が十分であることを確認します。
(2)固化剤散布
固化剤散布機を用いて除染エリアに固化剤を散布します。
(3)養生
固化剤散布後数日間養生します。
(4)表土の剥ぎ取り・集積・詰込み
分離回収機もしくは平爪付きバックホウを用いて表層土を剥ぎ取ります。剥ぎ取った除去物はバックホウを用いて集積し,フレキシブルコンテナに収納します。
(5)運搬
フレキシブルコンテナをトラッククレーン等で一時仮置き場まで運搬します。
4.使用機材
保護具(半面マスク,ゴム手袋等),分離回収機(バックホウベース),固化剤プラント,固化剤散布機,バックホウ(平爪付き),トラッククレーン
5.留意事項等
(1)重機の旋回範囲,死角には立ち入らないこととします。
(2)放射能濃度の深度分布を把握するとともに,耕盤の深度を確認し,最適な剥ぎ取り深さを決定することが重要です。
(3)含水率の高い土壌では分離回収機の移送部配管が閉塞する恐れがあるため,バックホウを用いるのが有効です。
(4)固化剤は灰白色で目立つため,剥ぎ取り残しを判別する目印としての効果もあります。
表土固化剤を用いての表土剥ぎ取りによる農地の除染の歩掛例
農地において“表土固化剤→分離回収機”を用いた表土剥ぎ取りによる除染の本事業における歩掛例を以下に示します。
- 内容:固化剤散布,表土剥ぎ取り(分離回収機(バックホウベース)),搬送,詰込,運搬(水田・畑)
- 歩掛表
名称・項目 |
仕様 |
単位 |
数量 |
資機材搬入出 |
トラック 4t積 2.9t吊 |
組 |
1.00 |
固化剤散布 |
散布プラント |
m2 |
5,740 |
土壌回収 |
バックホウ回収 |
m2 |
5,740 |
名称・項目 |
仕様 |
単位 |
数量 |
【 労 務 費 】 |
|
|
|
土木一般世話役 |
|
人日 |
2.85 |
運転手(特殊) |
|
人日 |
3.00 |
普通作業員 |
|
人日 |
16.00 |
【 機械損料 】 |
|
|
|
トラッククレーン装置付 |
積載質量 4t積 2.0t吊(供) |
台日 |
3.00 |
トラッククレーン装置付 |
積載質量 4t積 2.0t吊(運) |
台時 |
18.00 |
【 諸雑費 】 |
|
式 |
1.00 |
名称・項目 |
仕様 |
単位 |
数量 |
【 労 務 費 】 |
|
|
|
土木一般世話役 |
|
人日 |
0.60 |
特殊作業員 |
|
人日 |
2.00 |
普通作業員 |
|
人日 |
2.00 |
【 材 料 費 】 |
|
|
|
マグネシウム系固化剤 |
45Kg/m3 |
t |
5.74 |
【 機械損料 】 |
|
|
|
種子吹付機 車載式(客土用) 37kW |
タンク容量 4.0m3 (供) |
台日 |
1.00 |
種子吹付機 車載式(客土用) 37kW |
タンク容量 4.0m3 (運) |
台時 |
6.00 |
給水車 118kW |
タンク容量 3,800L (供) |
台日 |
1.00 |
給水車 118kW |
タンク容量 3,800L (運) |
台時 |
6.00 |
発動発電機 ディーゼルエンジン駆動 19kW |
排ガス対策型 定格容量 20kVA(供)1次基準値 |
台日 |
1.00 |
発動発電機 ディーゼルエンジン駆動 19kW |
排ガス対策型 定格容量 20kVA(運)1次基準値 |
台日 |
1.00 |
スラリーポンプ 泥水搬送用・直結形 11kW |
口径40mm 揚程50m (供) |
台日 |
2.00 |
スラリーポンプ 泥水搬送用・直結形 11kW |
口径40mm 揚程50m (運) |
台日 |
2.00 |
モルタル流量計(記録式) |
200L/min 2in(供) |
台日 |
1.00 |
モルタル流量計(記録式) |
200L/min 2in(運) |
台日 |
1.00 |
水中ミキサー |
1.2kW(供) |
台日 |
1.00 |
水中ミキサー |
1.2kW(運) |
台日 |
1.00 |
固化液タンク(蓋付き) |
5m3(供) |
台日 |
1.00 |
工事用高圧洗浄機 モーター駆動 3.7kW |
吐出量30.1L/min 圧力4.9MPa (供) |
台日 |
1.00 |
工事用高圧洗浄機 モーター駆動 3.7kW |
吐出量30.1L/min 圧力4.9MPa (運) |
台日 |
1.00 |
ポリタンク(洗浄水用) |
1m3(供) |
台日 |
1.00 |
空気圧縮機 可搬式エンジン・スクリュ型19kW |
超低騒音 吐出2.5m3(供) 排対2次 |
台日 |
1.00 |
空気圧縮機 可搬式エンジン・スクリュ型 19kW |
超低騒音 吐出2.5m3(運) 排対2次 |
台日 |
1.00 |
分電盤 |
(供) |
台日 |
1.00 |
【 諸雑費 】 |
|
式 |
1.00 |
名称・項目 |
仕様 |
単位 |
数量 |
【 労 務 費 】 |
|
|
|
土木一般世話役 |
|
人日 |
0.90 |
運転手(特殊) |
|
人日 |
2.00 |
普通作業員 |
|
人日 |
4.00 |
【 材 料 費 】 |
|
|
|
大型土嚢 |
耐候性(3年) |
袋 |
22.00 |
【 機械損料 】 |
|
|
|
バックホウ |
平積容量 0.2m3(供) |
台日 |
2.00 |
バックホウ |
平積容量 0.2m3(運) |
台時 |
12.00 |
【 諸雑費 】 |
|
式 |
1.00 |
表土固化剤を用いての表土剥ぎ取りによる農地の除染の技術評価
【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より
表土固化剤を用いての表土剥ぎ取りによる農地の除染作業手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。
整理番号 |
農地-4 |
||||
大分類 |
農地 |
||||
中分類 |
水田,畑 |
||||
小分類 |
|||||
除染手法 |
薄層表土剥ぎ取り(B) |
||||
内容 |
固化剤散布,表土剥ぎ取り(分離回収機,バックホウ),集積,搬送,詰込,運搬 |
||||
除染方法 |
<除染手順> 資機材搬入:→固化剤散布3日養生: →表土剥ぎ取り: 固化剤プラント,散布機 分離回収機,バックホウ(平爪付き) →搬送・詰込: →運搬(一時集積所まで): 人力,バックホウ トラッククレーン <除染概要> 資機材を搬入します。固化剤散布機により固化剤を散布し3日の養生後,分離回収機あるいはバックホウ(平爪付き)で表土を剥ぎ取り,フレキシブルコンテナへの詰込みます。トラッククレーンで除染箇所の一時集積所まで運搬します(運搬距離100m)。 |
||||
主要機械仕様 |
分離回収機(バックホウベース),固化剤プラント,固化剤散布,トラッククレーン |
||||
環境条件 |
適用環境条件 |
氷点下では固化剤が固化せず,除染効果が期待できない。 |
|||
施工制約条件 |
高含水土壌では分離回収機による回収は困難。 |
||||
評価 |
除去物 |
施工スピード (作業員数) |
290m2/日 (6人) (内,固化剤散布:2,870m2/日,土壌回収:410m2/日) |
||
除去物発生量 |
300~800袋/ha(剥ぎ取り厚2~5cm) |
||||
除去物内容 |
草根,土壌 |
||||
水処理方法 |
使用水量 |
土壌 |
|||
汚染水回収方法 |
― |
||||
回収率 |
― |
||||
除染係数の目安 |
DF |
1.7~3.3 |
|||
低減率 |
40~70% |
||||
コスト(直接工事費,>1,000m2) |
880円/m2 |
||||
施工上の留意点 |
・放射能濃度の深度分布を把握するとともに,耕盤の深度を確認し,剥ぎ取り深さを決定することが重要です(除染効果の確保,除去物量の適正化)。 ・なお,高含水比土壌では分離回収機の移送部配管が閉塞する恐れがあり,これに替えてバックホウで剥ぎ取ることが有効です。 ・その他,固化剤は灰白色であるため,取残しがあるかどうかの目印としての効果があります。 |