バックホウを用いた表土の剥ぎ取りによる農地の除染方法

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2(1)①(b)章“Ⅲ 農地”より

農地における除染において，“バックホウ”は表土の剥ぎ取りを行う際に用いる一つの方法です。

事故直前に田起こししていない農地では，放射性セシウムによる汚染の多くが地表面から深さ5 cm程度の表土にとどまっていることから，表土を削り取る「表土剥ぎ取り」を実施しました。
作業は，対象エリアの草を刈った後，表土の剥ぎ取り，剥ぎ取った表土のフレキシブルコンテナへの詰め込みの順で実施しました。剥ぎ取る表土の厚さは，事前の土壌サンプリング結果または作業前に試験的に表土剥ぎ取りを実施し，効率的に線量を低減できる厚さを調査した結果から決定しました。

バックホウを用いて，農地の表層土を剥ぎ取ります。剥ぎ取った除去物についても，バックホウを用いて集積します。

浪江町津島区における実施結果（表土剥ぎ取り，機械，5cm）田畑
	除染前	除染後	低減率(%)
空間線量率(1m) (μSv/h)	11.01	5.34	51
表面線量率(1cm)(μSv/h)	15.13	6.99	54
表面汚染密度(cpm)	7,520	3,260	57

バックホウによる農地の除染（葛尾村）

バックホウを用いた表土の剥ぎ取りによる農地の除染の具体的な流れ

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

農地におけるバックホウを用いた表土の剥ぎ取りによる除染方法の流れを以下に示します。

1.目的

水田・畑の除染方法として，バックホウを用いた表土層の剥ぎ取りの手順を示します。

2.作業項目

使用機材点検
表土の剥ぎ取り・集積・詰込み
運搬

3.作業手順

(1)使用機材点検
使用する機材が想定動作することを確認します。また，安全対策が十分であることを確認します。

(2)表土の剥ぎ取り・集積・詰込み
平バケット付きもしくは平爪付きバックホウを用いて表層土を剥ぎ取ります。剥ぎ取った除去物はバックホウを用いて集積し，フレキシブルコンテナに収納します。

(3)運搬
フレキシブルコンテナをトラッククレーン等で一時仮置き場まで運搬します。

4.使用機材

保護具（半面マスク，ゴム手袋等），平バケット付きもしくは平爪付きバックホウ，トラッククレーン

5.留意事項等

(1)重機の旋回範囲，死角には立ち入らないこととします。

(2)放射能濃度の深度分布を把握するとともに，耕盤の深度を確認し，最適な剥ぎ取り深さを決定することが重要です。

バックホウを用いた表土の剥ぎ取りによる農地の除染の歩掛例

農地において“バックホウ”を用いた表土の剥ぎ取りによる除染の本事業における歩掛例を以下に示します。

内容：表土剥ぎ取り（バックホウ），集積，搬送，詰込，運搬（水田・畑）
歩掛表

（1,300m ²当り）
名称・項目	仕様	単位	数量
【労務費】
土木一般世話役		人日	2.20
普通作業員		人日	9.30
運転手（特殊）		人日	3.50
【材料費】
大型土嚢	耐候性（3年）	袋	100.00
【機械損料】
バックホウ　クローラ型 60kW	平積容量　0.28m³（運）排対2次	台時	5.60
バックホウ　クローラ型 60kW	平積容量　0.28m³（供）排対2次	台日	0.90
バックホウ　クローラ型 64kW	平積容量　0.4m³（運）排対2次	台時	10.00
バックホウ　クローラ型 64kW	平積容量　0.4m³（供）排対2次	台日	1.70
バックホウクレーン機能付き　104kW	平積容量　0.6m³ 2.9t吊　（運）排対1次	台時	5.00
バックホウクレーン機能付き　104kW	平積容量　0.6m³ 2.9t吊　（供）排対1次	台日	0.80
トラッククレーン装置付き　132kW	積載質量　4t積 2.0t吊（運）	台時	8.60
トラッククレーン装置付き　132kW	積載質量　4t積 2.0t吊（供）	台日	1.40
【諸雑費】		式	1.00

留意事項: 上記は，平坦地で肩掛け式草刈り機を用いて人力で草刈りをする場合の歩掛りです。

バックホウを用いた表土の剥ぎ取りによる農地の除染の技術評価

【除染モデル実証事業編】報告書2.4.2 除染作業結果より

バックホウを用いた表土の剥ぎ取りによる農地の除染の手順や作業性の評価等を整理し以下に示します。

整理番号	農地-５
大分類	農地
中分類	水田，畑
小分類
除染手法	薄層表土剥ぎ取り（Ｃ）
内容	表土剥ぎ取り（バックホウ），集積，搬送，詰込，運搬
除染方法	＜除染手順＞表土剥ぎ取り： →集積： →搬送・詰込：バックホウ人力，バックホウバックホウ（平爪付） →運搬（一時集積所まで）：　トラッククレーン＜除染概要＞平バケット付きバックホウまたは平爪付きバックホウで表土を剥ぎ取ります。剥ぎ取った土壌をバックホウで集積，搬送，フレキシブルコンテナへ詰込みます。トラッククレーンで除染箇所の一時集積所まで運搬します (運搬距離100m)。
	主要機械仕様	平バケット付きバックホウ，平爪付きバックホウ，トラッククレーン
環境条件	適用環境条件	除染効果に影響するような環境条件は見当たらない。
	施工制約条件	バックホウの走行可能な地耐力を有すること。
評価	除去物	施工スピード（作業員数）	1,300m²／日　（15人）
		除去物発生量	300～800袋／ha程度（剥ぎ取り厚2～5cm）
		除去物内容	草根，土壌
	水処理方法	使用水量	―
		汚染水回収方法	―
		回収率	―
	除染係数の目安	DF	1.3～3.3
		低減率	20～70%
	コスト（直接工事費，＞1,000m²）		560円/m²
施工上の留意点改善点	・放射能濃度の深度分布を把握するとともに，耕盤の深度を確認し，剥ぎ取り深さを決定することが重要です（除染効果の確保，除去物量の適正化）。