放射線の主な種類として,アルファ線,ベータ線,ガンマ線および中性子線があります。
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アルファ粒子は,ラジウム,ウラン,プルトニウムといった重い元素の原子核から放出されます。これらは,その飛跡に沿って高密度エネルギーを得,非常に効果的に生物学的な損傷を引き起こします。一方で,紙一枚より薄い物質で止めることができます。そのため,外部被ばく対しては,ほとんど心配はありませんが,アルファ線放出核種を吸入した場合,それは非常に有毒です。アルファ線放出核種のほとんどは,一般的に消化管には吸収されにくいため,経口摂取した場合には,吸入した場合に比べ,有毒性はかなり低いです。
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ベータ粒子は,軽い元素,重い元素のいずれの原子核からも放出される電子(または陽電子)です。その飛程は生体組織内で数mm程度です。そのため,ベータ線放出核種が皮膚汚染のように存在する場合,大きな影響を受ける可能性があります。ベータ線放出核種を経口摂取または吸入した場合の影響については,ベータ線が飛跡に沿って得るエネルギーは比較的低密度であるので,アルファ線に比べると一般に有害性は低いですが,ベータ線放出核種は消化管で吸収されやすいことが多いです。
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中性子は,核分裂で生成される電荷を持たない粒子であり,主として外部被ばくと関連しています。体内では陽子(水素の原子核)と散乱を起こし,生物学的損傷を引き起こすのは,その際反跳された陽子です。この反跳陽子のエネルギー密度はアルファ線とベータ線の中間です。
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ガンマ線とX線は電磁波の放射線です。本質的には可視光と同様のものですが,より高いエネルギーを有しています。生体組織中の電子との相互作用を引き起こし,生物学的損傷を引き起こすのは,その相互作用により誘起された高エネルギーの電子です。影響を及ぼす方法はベータ粒子と類似しています。しかしながら,ガンマ線とX線は生体組織内で少しずつしかエネルギーが減衰せず,飛程も数cm以上と長いです。そのため,ガンマ線とX線は外部被ばくと内部被ばくの両方で放射線影響を及ぼす可能性があります。
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参考文献
1) Martin, A and Harbison, S, An Introduction to Radiation Protection, Fifth Edition, Hodder Arnold, London, 2006