本事業においては,継続的な監視を行うにあたり巡視点検要領を策定しました。これには,仮置場における点検監視箇所や,測定及びサンプリング項目や頻度,異常時の措置方法が定められています。
この巡視点検要領にしたがい,仮置場を継続的に監視した結果,空間線量率及び地下水の放射能濃度については,保管開始時から平成24年5月末までの期間において仮置場における放射線の遮へい機能の低下が疑われるような現象は認められていません。
一方,凍結土壌の融解やフレキシブルコンテナの隙間に残っていた雪の融解によって多量の浸出水が発生しています。これは,本事業が冬期に実施されたことから,阿武隈高地に位置する地区においては除染時に表土が凍結するとともに,定置中に降雪があったためです。また,可燃物内の温度が55℃程度まで上昇した仮置場がありました(図1)。その後低下したが,ガス抜き管の増設等の対策を検討する事態となりました。
以上のことを踏まえ,浸出水の漏えい防止を図るための水位管理方法を定めたマニュアルを策定するとともに,大雨,地震,火災等の緊急時における点検及び対応並びに報告を迅速かつ的確に行うための緊急時対応マニュアルを策定しました。
その他,本事業では以下に示すような不具合がありました。
(i) 仮置場の形状に係る不具合
厳寒地域においては,気温の変化に伴い,遮へい用フレキシブルコンテナ内の土壌が凍結したり融解したりすることによって,フレキシブルコンテナが変形したために仮置場の施設の一部にズレや一部崩れが発生しました(図2)。
また,可燃物の腐食や凍結土壌の融解によって沈下が発生した仮置場がありました(図3)。
(ii) 上部遮水シートの不具合
関連事項沈下が発生した仮置場の一部では,沈下が不均等であり,ガス抜き管と遮水シートの溶着部に不具合が発生し(図4),そこから強雨時に雨水が浸入しました。また,上部遮水シートの一部に溶着不良があったため,ここから雨水が浸入した仮置場もありました。
遮水シートは,フレキシブルコンテナの上の起伏のある面上で溶着することや,寒冷期に溶着することで不具合が生じやすかったとも考えられます。
(iii) 浸出水ポンプピットの変形
関連事項遮水シートに常時高い水圧が掛かっていると考えられる仮置場がありましたが,このことを避けるために直接負荷部分として活用している法面の地下水位を低下させるための排水溝を掘削するとともに,上部遮へい用覆土中に降水の溜まりを生じさせないよう排水管を敷設しました。
堰堤内に貯水した浸出水を排水するための浸出水ポンプピット(ポリエチレン製)が変形するとともに,変形した浸出水ポンプピットが押し込まれて集排水管との接続部が閉塞し,排水ができなくなる不具合が発生しました(図5)。これは,浸出水ポンプピットが法面近傍に位置しており除去物の荷重による水平方向の応力が生じたこと,フレキシブルコンテナと浸出水ポンプピットが直に接しており力を受けやすい状態であったことが原因と考えられます。
(ⅳ) 野鳥による損傷
保護マットの一部が野鳥によって損傷を受けることがありました(図6)。