原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR) と国際放射線防護委員会(ICRP)

UNSCEAR

 「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR) は,1955年に国連総会で設置が決定されました。国連機構におけるUNSCEARの任務は,放射線による被ばくのレベルとその影響を評価し,報告することです。世界中の政府および機関は委員会の推定値を,放射線リスク評価および防護基準策定の科学的根拠として信頼しています。

 UNSCEARの作業計画は国連総会で承認されたもので,一般に4~5年にわたるものです。事務局は,国連加盟諸国や国際機関,非政府組織から提出された関連データをまとめ,専門家を雇って,それらのデータの解析,関連する科学文献の調査および科学的評価を行わせます。事務局は精査のためにその評価を毎年,UNSCEARのセッションに提出し,一通りの手続きが終わった後に,その評価の要旨が発行されます。

 UNSCEAR はその設立当初より,年会を59回開催し,今までに主要な報告書を20件発行しています。ウィーンに小さな事務局があり,国際連合環境計画(UNEP)と機能的な連携をとっています。

 米国では,米国科学アカデミー(NAS)の「電離放射線の生物学的影響に関する委員会」(BEIR) がUNSCEAR の仕事のある側面を補足しています。

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ICRP

 国際放射線防護委員会(ICRP)の任務は,放射線による癌や他の疾患および影響を防ぐことを助けること,また環境を守ることです。

 ICRP は,1928年以来,放射線防護の基準,法令,指針,計画,および実施方法における共通の根拠として世界中で使用されている国際放射線防護体系を開発,整備,向上させています。ICRPは,放射線防護のあらゆる側面に関して100以上の報告書を発行しています。そのほとんどは放射線防護の特定の分野について述べたものですが,一部は基本的勧告書と呼ばれるものも出版され,それぞれに放射線防護の全体的なシステムについて述べられています。国際放射線防護体系はICRPによって,(i)放射線被ばくと影響についての現時点での科学的理解,および,(ii)価値判断,に基づいて開発されてきたものです。この価値判断には,社会的期待,倫理およびシステムを適用することによって得られる経験が考慮されています。

 ICRPは独立した国際機関で,六大陸,約30カ国からのボランティアの専門家200人以上から構成されています。これらの専門家たちは,放射線防護に関してすぐれた科学者および政策立案者を代表する人たちです。ICRPの財源は,多くの放射線防護に利害関係のある機関からの助成により成り立っています。

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