インタビューINTERVIEW

今年4月に設置された廃炉国際共同研究センター。
小川センター長に聞く。

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた研究開発や人材育成の拠点となる「廃炉国際共同研究センター」が今年4月、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構敷地内に設置されました。
世界の英知を結集し、加速プランに基づく廃止措置に向けた中核的な役割を担う施設に着任した小川徹センター長に、同施設についての役割や取り組みなどを聞きました。

廃止措置実施のための先端的技術研究開発と人材育成

――設置の目的は?

 ご存じのように東京電力福島第一原子力発電所(以下、1F)で事故が起きました。炉心が崩れていることは、今までの調査からわかっています。そこから先は、合理的な推論を超えるものではありません。1Fの三つの原子炉において何が起きたのか、現状はどうなのか、必ずしも明確にはなっていません。それを今、東京電力(以下、東電)がいろいろな情報を集めて明らかにしようとしているわけです。その断片的な情報をつなぎ合わせる鍵を提供するのは基礎基盤研究の役割の一つです。
それから二つ目は、新しい技術を導入していかないと廃止措置はうまくできません。我々は1Fの廃止措置の事業主体である東電と国際廃炉研究開発機構と協力して、まだ原子力分野で使われていない技術をできるだけ早く育てて、使えるようにする役割を担っていきたいと思います。
そして三つ目が、このセンターを原子力のプロ集団と原子力以外のいろんな技術を持っている国内外の専門家が集う結集の場とすることです。大まかにその三つですね。

――福島研究開発部門における位置づけや役割を教えてください。

 福島研究開発部門には、大きな仕事として二つあります。一つは福島の環境の問題。現在、環境はどうなっているのか、これからどうなっていくのかを研究開発することです。もう一つは、東電の進める廃止措置を基礎基盤のところで支えることです。センターは、後者のために、国内外のいろいろな知恵を結集し、また、活動の集積点として機能していきます。だから日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)内の他部門とも人の循環、専門性の循環を促しながら原子力機構の力を最大限に発揮しなければいけないと考えています。

多分野の研究者や技術者が集い、アイデアを活用できる仕組みづくり

――センターには具体的な取り組みとして四本柱を掲げていますが、一つ目の「国内外の英知を結集する場」とは?

 まだセンターが発足したばかりで具体的に話をできる段階ではないのですが、欧州の軽水炉の研究者でプロジェクトリーダーを務めたカルロ・ビタンザ氏を副センター長にお迎えしました。彼を起点に欧州の様々な研究機関と協力をしていく計画です。また米国から強力な研究者に加入してもらう話も進んでいます。廃炉にかかわる分野では、欧州・米国ともに特色があります。そういった人たちと連携し、研究開発していきます。
もう一つは米国だと過去に軍事廃棄物による環境汚染があり、その対策の経験に基づく力を保有しています。その経験を取り入れていきたいとも考えています。
また国内とは、大学との協力です。原子力エネルギー以外の研究をしているところとも幅広く協力していきたい。優れた技術を持ちながら、(廃止措置に向けて)どう活かしたらよいのかわからないという人たちにも声をかけて幅広く参加を促していきたいと思っています。
さらには、いま福島部門では福島県の大熊と楢葉に研究施設を作りつつあります。そこと今我々が、1F近郊に整備しようとしている「国際共同研究棟」があります。来年度中にはここに全てを集約し、様々な技術分野のユーザー(研究者・技術者)が来て、アイデアを活用できる仕組みを作っていくのが大事な役割です。
センターを欧文記載で「CLADS:Collaborative Laboratories for Advanced Decommissioning Science」と名付けたのも、そんな意味合いからです。コラボレイティブ・ラボラトリーと複数形にしたのは、トップダウン的な組織ではなくて、いろんな人が自由に出入りしながら情報を交換し、技術を持ち寄り廃炉に活かす。センターは、その人と技術の結集の場のようなもの。「有効な技術を開発したので使ってください」とか、「ツールが出来たのでこれを使えば新しいものが見えてきますよ」とか、ここは、そんないろんな人の知恵が結集して研究開発するバザール型の運営を心がけながら、カセドラル型の統制をとって進めるべき廃炉という事業に成果を提供していく役割を担っていきます。

――二つ目の柱である「廃炉研究の強化」については?

 廃炉研究には、三つのディビジョンがあります。一つが燃料デブリ(溶け落ちた核燃料などの塊)の分析と取扱いです。これはデブリの性状を知るためにいろんなデータや証拠を集めるということ。二つ目が事故進展挙動評価。集まったデータから実際(炉心内で)何が起きたのか、現状はどうなっているのかを研究して廃炉計画に活かしていきます。そして三つ目が廃棄物処理処分についての取り組みです。廃炉ともなると今まで考えてもいない種々雑多な廃棄物が出ます。それぞれの特性を正しく把握して、それぞれに合った処理処分をしていかなくてはいけません。その技術の基盤を作っていこうというものです。

分析技術の分野を強化 今まで見えてこなかったことが見えてくる

――三つ目の柱「中長期的な人材育成の強化」については?

 廃止措置には新しい技術を積極的に取り入れていかなくてはうまくいきません。その観点から人材育成は大事な分野だと考えています。しっかり技術を身につけた人材は、廃止措置に向けた取り組みだけではなく、今後の原子力の安全性にも貢献していきますから。
いま特に強化しなければならないと考えているのは、分析関係の人材です。これは廃炉の戦略を立てる意味でも重要です。わずかなサンプルから最大限の情報を引き出して、その情報から戦略を立てていかなくてはいけないのです。

――具体的手法は?

 いまは本物のデブリは手に入らないので模擬デブリで分析しています。今後、廃炉が進んでいけば様々なサンプルが出てきます。それをいろんな角度から分析していきます。その一つが平成29年度に(福島県の)大熊町に造ろうとしている「大熊放射性物質分析・研究センター」が大きな役割を担います。「分析」というと一般的には、どの元素がどれくらい入っているか、というイメージだと思います。でも今の分析はそれを超えて、どういう元素がどんな形をしてどんな電子状態で存在するのかという情報をわずか1ミクロンとか2ミクロンの試料からも取り出せるようになっています。そんな先端的な分析技術を積極的に導入することで、今まで見えてこなかったことが見えてくるかもしれない。その活動を強化していきます。

――大学との人材面での連携は?

 文部科学省が「廃止措置基盤研究・人材育成プログラム」などの採択機関と連携していきます。同時に我々もいろいろなテーマを立ち上げていて、得意な分野や人材のいる大学と交流しながら人材の育成に取り組んでまいります。

――四つ目の柱「情報発信機能の整備」については?

 国立国会図書館と連携して国や東電が発信してきた情報を一元化した「JAEAアーカイブ(福島原子力事故関連情報アーカイブ)」として発信していきます。
1Fの廃止措置に関していろんな人が貢献したいと思っているけど、何が課題なのか、どんな技術が求められているのか必ずしもわからない。原子力の専門家でさえわからない。そこのインタープリターが必要。その役目をセンターが務めたいと考えています。課題の発信、現状で分かっていることや逆にわからないことを外に発信していく。それも大事な役割だと思います。

福島の人々のためにも事故を徹底的に解明したい

――三つ目の柱「中長期的な人材育成の強化」については?

 私が福島の人だと仮定したら「あの事故は本当に何が起こったのか」とまず知りたいと思うのです。だから、どんな事故だったのかということをとことん解明していく。専門家として責任があります。もう一つは、誰もが早く安心したいと思うのです。いまサイトの中は安定しているといってもいろんな不確定要素があります。そこを原子力機構として明確にしていかないと福島の人たちに申し訳ない。そのためにセンターも微力ながら頑張っていきたいと思っています。

小川 徹廃炉国際共同研究センター長 兼 長岡技術科学大学大学院工学研究科教授

専門は原子炉燃料の研究開発。「原子力機構で長年、研究 開発してきた高温ガス炉や超ウラン元素などの基礎基盤研究成果を活かし、他分野の技術者や研究者と協力しながら(廃炉に)貢献したい」と抱負を語る。